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電話が終わるのを見計らって、補助監督さんが、前を向いたまま「高専に戻ったらええですか?」と問う。

「あぁ、大至急頼む」
「何かあったんでしょうか?」

ただならぬ雰囲気に緊張をつのらせながら聞くと、日下部さんは難しい顔をしながら、「わからん」と、こめかみを指で揉みほぐした。

「高専に蠅頭(ようとう)が溢れかえってるらしい」
「高専に? 天元様の結界内じゃーー」

ないですか、と言いかけて、突然、殴られたみたいにある考えが頭をよぎった。

天元様。たしか、今日は天元様が星漿体と同化する日だったはずだ。

日下部さんは、私の内心を読んだかのようにうなずいた。

蠅頭(ザコ)はどうとでもなる。やばいのは、同化に問題があった可能性が高いってことだ」
「星漿体護衛任務には、私の同期二人があたっているはずです。彼らに何かあったんでしょうか?」
「高専は今、大混乱の最中(さなか)だからな。情報が錯綜(さくそう)して、何もわからないそうだ。とりあえず、関東圏の任務にあたっている術師は全員高専に向かうようにだと。何人がすぐに応じられるかはわからねえけどな」

初夏は呪術界の繁忙期だ。優秀な術師であればあるほど、難易度の高い任務に駆り出されている。

ふと窓の外をみると、カラスの大群が、空に黒い円陣を描くように舞っていて、私はその光景をとても(わずらわ)しく感じた。


***


理子ちゃんは、同化の直前に、高専を急襲した伏黒甚爾という男の手によって殺された。

高専に向かう車内で、「どうやら護衛任務が失敗して、星漿体が殺されたらしい」と日下部さんから聞いたとき、私はうまく返事ができなかった。ただ、昨晩の理子ちゃんの笑い声が、頭のどこかで何度も思い起こされた。

そのあいだも、伏黒甚爾が死んだとか、襲撃後行方不明だった五条君が理子ちゃんの遺体を抱えて帰ってきたとか、黒井という女性が医務室で亡くなったとか、高専の建物が一部半壊になったとか、さまざまな情報が日下部さんの携帯にもたらされた。

私は信じられない気持ちでいっぱいで、でも変なふうに冷静な頭で、それらを聞いていた。

何が起こっているのか、まるで分からなかった。

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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