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私が理子ちゃんに対して抱いている感情は、きっと、可愛らしい年下の女の子に対する、どこにでもある普通の好意だ。

だから今感じているやりきれなさは、正当なものではなく、状況に惑わされているだけなのかもしれない。

それでも、今はその感情に酔っていたかった。

私に理子ちゃんを助けることはできない。だけど、無責任な同情心からくる、他人行儀でささやかな繋がりこそが、どうしようもない不安や辛さを癒す夜も、きっとあるから。


***


翌朝、理子ちゃんとの電話を終えて五条君から聞き出した集合場所に向かうと、すでに日下部一級術師が待機していた。彼は白いガードレールを背もたれに、ゆるりと煙草をふかしている。

「お待たせして申し訳ありません。呪術高専東京校二年の竹之内瀬奈です。よろしくお願いいたします」
「日下部だ。ま、のらりくらりといこうぜ」

日下部さんは身をかがめて地面で煙草をねじ消すと、すぐ側に横付けされていた車の後部座席にさっと乗り込んだ。その背を追って、あわてて私も隣へ乗り込む。

「なぁ、竹之内よ」
「はい」

車が発進するなり深刻な顔で切り出されて、私は身構えた。

「一級呪霊と対峙した経験はどれくらいある?」
「両手の指に満たないほどです」
「そうか。なら今回の任務は、すべてお前に任せる」
「すべて、ですか?」
「あぁ。俺は口も手も出さない。俺はいないものとして、単独で祓除するんだ」

戸惑う私を前に、日下部さんは真剣な目で続けた。

「一級呪霊を相手にそれだけ生き残ったなら、準一級術師としての素質は十分にあるだろう。あとは経験だ。最初から俺がフォローに入ってもいいが、それじゃ自信はついて来ない。『ひとりで祓除できた』という経験が、確かな自信を作るんだ」
「はい」
「もちろん俺はそばに控えている。何かあれば全力で援護しよう」
「ありがとうございます……」

日下部さんは重々しくうなずくと、車のシートポケットから取り出した『甲信越! 秘湯の旅10選!』に目を落とした。ちなみに今から向かうのは、山梨県の急峻な山々に囲まれた地域である。

確かにおっしゃっていることは一理ある。あるのだが……、なんだろう。真面目ぶった雰囲気で、日下部さんがサボれるプランを押し付けられた気がする。

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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