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私はほっとした。普通の女の子だ。

「そうなんだ。じゃあそこに五条君もいる? いるなら代わってほしいの」
「ホテルを見回るって出て行ったきり、見てない」
「そっか。なら夏油君は?」
「部屋の前で待機してるらしいけど……」
「そう。なら悪いんだけど、夏油君に代わってもらえるかな?」
「嫌じゃ!」
「えっ」

急に元に戻った言葉遣いよりも、その勢いに驚いた。

「妾の携帯は海に落として水没してしまったのじゃ! 前髪の携帯がなければ、友達に連絡できん」
「じゃあ友達との電話が終わってからでいいよ」
「数時間後になるが良いか?」
「そんなに長電話なの?!」

腕時計の針は深夜1時を指している。遠距離恋愛中の彼氏との電話ならわかるが、ただの友達と、平日の夜に何をそんなに話すというのか。

「明け方になっちゃうよ。明日に差し支えるんじゃない?」
「構わぬ。眠るなどもったいない」
「もったいないって……」
「明日を迎えられるのも、これで最後なのだから」

私は黙り込んだ。

そうか、この子が星漿体か。

今までの会話の流れから、なんとなく察してはいた。けれど本当に、こんなに若い少女が星漿体だなんて。

深夜だった。日本中が眠ってしまったのかと思うほど静かな時間が流れた。

「竹之内は、沖縄に来たことがあるか?」

沈黙を押し切るように、理子ちゃんが言った。

「ううん、一度も」
「そうか。……沖縄は凄いんじゃぞ! 海も空も青い。特に海は、クリームソーダみたいに青くて、冷たくて、シュワシュワと泡立つ波打ち際が気持ちいい」
「うん」
「あと、美ら海水族館にも行ったぞ。水族館には、昔、黒井と……、あ、黒井というのは妾の世話役なんじゃが、行ったことがある。だが、美ら海水族館は比較にならないほど凄かった! 特に大水槽に圧倒された」
「そう。大水槽では、何が見れるの?」
「ジンベイザメじゃ! 人を丸呑みにできるほど大きいが、主食はプランクトンらしい」
「穏やかなサメなんだね」
「凶暴な外見に反してな」

それからな、とやたら明るく話しかけてくる理子ちゃんに相槌を打ちながら、私はどんどん切なくなった。

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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