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受信ボックスに新着のメールはない。五条君に電話してみても、コール音が鳴るだけで出る気配がなかった。

明日は日下部一級術師との任務だ。初対面だから連絡先が不明だし、補助監督さんも関西出身の方で明日東京入りされる予定だと聞いている。なんとしてでも五条君から集合日時、もしくは2人のうちどちらかの連絡先を聞き出さなければならなかった。

急な引き継ぎでギリギリなスケジュール管理を強制されている現状に苛々しつつ、何度かかけ直すも、繋がらない。護衛任務は長引いているようだし電話に出られない状況なのかな、と思わなくはなかったが、こちらも切羽詰まっていた。

もしかして、夏油君なら出てくれるかも。

ふと思い至って、祈るような気持ちで架電すると、数コールのあと電話が繋がった。

「あっ、夏油君? 忙しいところごめんね。今って時間だいじょーー」
何奴(なにやつ)じゃ!」

聞き覚えのない少女の声と時代劇のような話し口調に、私は思わず言葉を引っ込めて息をひそめた。携帯電話を耳から離して液晶画面を確認するが、やはり通話相手は夏油傑と表示されている。

「すみません。夏油傑さんの携帯電話で間違いないでしょうか?」
「さては前髪の女か?」
「いえ……」

もしかして、夏油君が携帯電話を落としてしまって、それをこの少女が拾ってくれたのだろうか? いや、少女は夏油君の名前を聞いて、前髪と言った。呪術高専の服装規定が甘いのをいいことに、ボンタンに足袋という独特な美的センスを発揮している彼の、最も謎のこだわりである、左側に一房だけ垂れた前髪。それを知っているということは、顔見知りには違いないだろう。

「あの、お名前聞いてもいいですか?」
「妾の名を知りたくば、まず貴様から名乗るがよい!」
「えっと……、竹之内です。夏油君とは同期、いや、学校の同級生です。あなたは?」
「うむ。妾は天元様じゃ」

しーん、と沈黙が流れた。

てんげんさま……天元様? 呪術高専の地下最深部にいらっしゃるはずじゃ、というか、はっちゃけすぎ……え、天元様?

電話越しに私の困惑が伝わったのだろう。

「あの」

先ほどとは打って代わって、遠慮がちな、少女らしく恥じらうような声で、電話相手が沈黙を破った。

「天内理子、です。携帯借りたの、友達に電話したくて」

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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