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ある日、授業が終わって寮にもどろうとすると、夜蛾先生が私を教室から連れ出しにきた。

呼び出しを喰らう私を茶化す人は、誰もいない。五条君と夏油君は任務だし、硝子ちゃんは怪我人の治療で授業を欠席していた。

夜蛾先生のうしろについて廊下を歩きながら、眩暈がするほどうるさい蝉の鳴き声に、つい窓をみやる。見渡す限り、どの窓もぴったりと閉じていた。蝉の鳴き声というのは、どんなに防ごうとしても、壁から天井から、沁み出してきてしまうものなのかもしれない。

職員室では応接スペースに座らされた。

真向かいの夜蛾先生は、着席するなり、私を安心させるように笑った。

「悪かったな、わざわざ職員室まで来てもらって」
「いいえ。とんでもないです」
「安心してくれ。叱るために連れ出したんじゃないんだ」
「そうですか、良かったです」

口ではそう言いつつも、私には真面目な学生である自覚があったから、説教で呼び出されたわけではなかろうという、根拠のない自信があった。

「目を通してほしい書類があってな」

そう言って夜蛾先生がテーブルに置いた紙束は、すべて一級案件の事前調査報告書だった。ざっと見たところ、担当者欄には五条君か夏油君、もしくはその両方の名前が記入されている。

「悟と傑には、来週から、星漿体護衛任務についてもらうことになった」

私は、書類をめくる手をぴたりと止めた。

星漿体。呪術界の最重要人物である天元様の肉体の老化を防ぐために、500年に一度、天元様に取り込まれる人間のことだ。

つまり、ふたりは、ーーけっして口には出せないがーー、天元様のもとへ生贄を捧げる任務につかされるということだ。

私は、自分のことのように気が重くなった。

「それは……、たしかにふたりは強いです。けれど、星漿体護衛任務を任せるには、若すぎるような気もするのですが」
「そうだな。しかし、天元様直々のご指名だ。この決定を覆すことは、誰にもできない」

教師として、上司として、堂々と告げる夜蛾先生の力強い瞳が、それでもわずかに揺らいだのを見て、私はそれ以上何かを言うことが出来なくなってしまった。

「そうですか。……それで、その間のふたりの任務を、私が引き継ぐというお話ですか?」

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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