桜麗華学院の〈桜国〉

10話 ページ13

今日から姫香は魔女になる。
学院中その話でつきっきりだ。

Cランクに下がった姫香は、今日から一週間桜国の一人になるのだ。流石の私も緊張する。

ドアを開け、颯爽と教室を歩く姫香に嫌悪感を覚える。その制服は、桜国の物になっている。

彼女の髪から香るのは、『夢の香水』だ。彼女から注文される香水は三作品目だと言う。

夢の香りは無いけど、女の子がうっとりする様なわたあめの香りを抽出した物だ。

私は昨日届いた『夜桜の香水』を香りながら、彼女が魔女になる二時間後──朝九時まで待った。


桜国の部屋に六人の高校生が集まる。

「あたし、魔女の月雪 姫香♡あたし、何の仕事をすればいいかなぁ？教えて教えて！」

大輔と美春が俯く。羽海は窓の向こうを眺め、翔太は恐怖に震えてズボンの裾を掴んでいる。

もはや平常心を保っていられなかったのだ。


「何回も言うけれど、覚悟は出来てるわね？」
「もっちろ〜ん！」

軽々しく話す彼女の口からは覚悟は感じられない。もしもそれが演技だとしたら大した物ね。

「貴方には今日、月曜日から土曜日まで【侍女】になるわ。役目は分かるかしら？」

「えっ、女王様になれるんじゃないの〜？」

「何、馬鹿な事言ってるのよ」

ふぅっとため息を付く。しかし姫香は懲りていない。


「侍女はいつも私のそばにいて、私のために尽くす役目よ。それで大丈夫かしら？」

「うん！大丈夫だよん！」

「そう。その余裕さ、いつ壊れるか楽しみだわ……」

「ん、瑠華ちゃんなんか言ったー？」

「いいえ何も」満面の笑みで伝える。



さあ、準備は整った。

あとはじわじわなぶり殺して行くだけね。

待ってなさい、私の侍女、そして魔女───！

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