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一ノ瀬先輩のなんで?という不思議そうな、でも困ったような顔が目に映った。
坂田も眉を下げながら、不思議そうな表情で私のことを見ていた。
『・・・今でも十分楽しいし・・・無理に思い出してもらったら、相川の負担になるかなって思って』
私はニコッという効果音がつきそうなほどの爽やかな笑みで話した。
一ノ瀬先輩と坂田は驚いたような顔をした。
なにか変なことを言ったか?なんて考えながら、2人の返答を待つ。
「バカ・・・」
坂田の口からボソッと呟くように言われた、バカという言葉。
その単語をなぜ言われたのか、その意味が分からず、私は頭の上にハテナマークを浮かべた。
「っ・・・Aちゃんのバカ・・・なんでそんな風に諦めるんよ・・・もしかしたら思い出してくれるかもしれへんやで?・・・たしかに苦しむかもしれへんけど・・・でも・・・そういうときは僕たちだっているやん・・・なんで頼ってくれへんの・・・?」
弱々しく、でも迷わずに言ったその言葉は、きっと坂田の本音で。
私の心にスッと入ってきた。
やっと止まった坂田の涙が、また溢れてきた。
なんで、私のためだけにそんなに泣いてくれるのかわけが分からなかった。
「・・・A、坂田の言う通りだよ。俺達もいるんだから、しっかりと向き合って。それに、まふの心配をしてたけど、まふなら大丈夫。いじめの事にも向き合えてたんだから、Aにも絶対に向き合ってくれるよ。だから、そんな不安にならなくていいんだよ?」
一ノ瀬先輩の言葉で、認めた。
自分が、真冬に思い出してもらえるか不安で、向き合っていなかったということを。
私の頬に温かい液体が伝った。
「A。楽しい思い出はいつか消える。でもそれは、それよりも楽しい思い出によって上書きされたからなんだと俺は思う。だから、まふに思い出させてやって?こんなことがあったんだって。だから、これからはもっとこういうことしようよって。俺らにしか心を開かなかったまふが、Aには自分から心を開いたんだから。Aだったら絶対にできるよ。だから大丈夫」
昔から、大丈夫という言葉が、皆が適当に言ってるってずっと思っていたから、嫌いだった。
でも、この2人の大丈夫は優しくて安心して、なにより温かい。
私は涙を拭って、はい、と返事をした。
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あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - 桜鈴(みすず)さん» ありがとうございます。私は東京なのでいつ感染するのかとビクビクしていましたが、桜鈴さんのコメントを見て頑張ろうと思いました。桜鈴さんもコロナに負けずに頑張りましょう。 (2020年4月13日 11時) (レス) id: 519239ae11 (このIDを非表示/違反報告)
桜鈴(みすず) - これからも頑張って下さい。コロナウィルスに負けないよう、群馬から応援し続けていますね。 (2020年4月13日 7時) (レス) id: 3e552d64a0 (このIDを非表示/違反報告)
あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - 桜鈴(みすず)さん» コメントありがとうござます。私もこんな物語があったらと思って書いていることが多いので、同じ気持ちの方がいてくれて嬉しいです。私の作品を見て泣いてくれてありがとうございます。 (2020年4月12日 11時) (レス) id: 519239ae11 (このIDを非表示/違反報告)
桜鈴(みすず) - 何度か、泣いてしまいました。こんな物語があったらよかったのに。 (2020年4月11日 23時) (レス) id: 3e552d64a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あづの ひみ(元朝日菜薔薇) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/AdAsnhmp/
作成日時:2020年1月18日 15時