小梅ちゃん ページ30
「お、いたいた」
間に合った、と井闥山学園側の客席からコートを見下ろす
決勝だからかものすごい人数で賑わっているし、応援も厳ついな〜と辺りを見回した
そういえば、臣に持って行けっておばあちゃんにお弁当渡されたんだった
朝出るの早かったから、出来たての方がいいでしょって
ほんとおばあちゃん、臣のこと大好きだなぁ
試合が始まるまであと1時間
観客席をキョロキョロと見回す臣とバッチリ目が合う
ニッコリ笑って手を振れば臣は嫌そうに眉を顰めた
おいおいなんだなんだツンデレか〜?
昨日の臣はどうした!!
これ、と腕に提げてるお弁当袋を少し持ち上げるとこっち来て、と下の方に誘導される
そのまま下に降りて、コートに出る扉の前で臣を待つ
開きっぱなしだし、稲荷崎の人もチラホラいて少し気まづいな
臣「ん、悪い」
「いいよ〜、こっちが昨日の梅ご飯でこっちが昆布のおにぎり、卵スープとおかずとあとこれ」
持っていたコンビニ袋から、飴玉をひとつ取り出す
「小梅ちゃん、小さい時から私も臣も好きなやつ」
臣「…ありがとな」
「いいえ〜…あ、もう一個古森くんにあげておいて」
臣「俺が2個食う」
「あ、そう?じゃあ試合_____」
頑張ってね、と肩を叩いて送り出した
角名「A」
「あ、倫。頑張ってね」
角名「ん、ありがとう。今のって佐久早?」
「うん、おばあちゃん家の隣に住んでて小さい時から仲良くしてもらってるんだ〜」
角名「…ふーん」
「どうしたの?」
声色が落ちて、きゅっと小指を握られる
角名「…俺さぁ」
シン、と静まり返った体育館内
いや、正確に言えば私と倫の周りだけやけに音が遠く感じた
角名「Aのこと、好き」
「……うん」
角名「俺のこと、見てて」
「…わかった」
じゃ、と名残惜しそうに離れていった彼の温もりが
酷いくらい私の心を冷ました
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作者名:イオリ | 作成日時:2020年8月12日 23時