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飯と暑さ ページ28

侑「……」


「ん?あ、ついてるよ」


口元についたソースをティッシュで拭いてあげようと手を伸ばす


侑「…なあ、Aちゃんってなんで俺の事嫌いなん?」


「え、」


伸ばした手はガシッと掴まれて、空中で止まる
強くはないけど弱くもない、痛くないような力加減


「べ、べつに嫌いじゃ…」



侑「じゃあなんで、




なんで俺と話す時に絶対目合わせてくれへんの」



「っ、」


ギュッと手に力が入った

完全に無意識だった
侑のジッと人を見つめる視線が何もかも見透かされそうで


侑「治が知ってて俺だけが知らんなんてあるはずないやんか。

俺、は…俺はAちゃんのこと、」


プルルルルル


ごくん、と生唾を飲んだ時

侑の携帯からコール音が鳴り響いた


侑「…もしもし」


治「ツム?お前どこほっつき歩いとんねん、母さん心配させんなや」


侑「Aちゃん家で飯食うとる」



治「Aちゃん家か………ん?えっ、Aちゃん?」



侑「そお、Aちゃん。母さんに最寄りのセブンまで迎えに来て貰えるよう言っといてや」



治「は?お前ちょ、」


侑「またなー」




プツンと電話が切れる


「…あつ、」



侑「美味いわ、Aちゃんの作る飯」



侑の箸が最後の一口を掴んで、口に持っていく
一つ一つの動作が綺麗で思わず見とれてしまった





侑「美味いけど、好きやない」






_____________________







好きやないなんて、初めて言われたな




暑さ凌ぎで開けた窓からは蒸し暑い風が入り込んでくる。オマケに蝉の声までついてきて、余計暑さが増してしまった。


はあ、とため息をついて部屋の隅にある扇風機に手を伸ばす。



侑はあの日から一切私に干渉してこなくなった
それはもう面白いくらい





ピロン、となった携帯電話を覗く






角名:インハイ決勝決まったら来て




そうか、インターハイ


去年のこの時期も臣が暑さにバテながら必死に部活に行ってた気がする
京治も確か先輩の有り余る体力にげっそりしてたなぁ


東京だっけ、ちょうどおばあちゃん家に帰ろうと思ってたし



いいよ、と一言打って送る

よし、とりあえず夏休みの課題片付けるか〜!とぐっと背伸びをした。

東京→←癖



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作者名:イオリ | 作成日時:2020年8月12日 23時

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