ヒロイン!120 ページ30
ただひたすらに瞼が重くて。それでも、意識だけははっきりとしてて。
「これは…。」
カツン、カツンと冷たいヒールの音が聞こえる。
ふと振り返ると、そこには悪魔がいた。
正確には、姿を認識することはできても、男なのか女なのかも分からなかった。でも、頭が判断することを拒否するように『これは悪魔だ』と何度も繰り返していた。
血に濡れた手が、慈しむように私に触れる。
不思議と恐怖はなかった。
「…面倒なことになってるみたい。」
悪魔は白い鎖の絡みついた大きな鎌を背負っていた。
悪魔から私に対する敵意はなにも感じなかった。けれど、気が抜けない空気を感じる。
不意に悪魔の後ろから、ひゅんっと紐のようなものが飛んできた。紐には木の蔦みたいなものが絡みついていた。
紐を避けると、キラキラした粉のようなものが飛んできた。
なぜだか触っちゃいけない気がしてそれも避けると、足元に炎が湧いた。
周りを炎に囲まれて止まると、髪の毛を何かが掠めた。髪の毛を触ると、なぜかびしょびしょに濡れていた。
悪魔が二回手を打つと、ぱっと世界が変わった。
私はどこかの屋根の上で、ぼうっと空を見ていた。
ふと下を見ると、真っ黒な影のようなものがうごめいていた。
目を凝らすと、それらは全て人型をしていた。
その影に悪魔が近づくと、影は一気に真っ赤なバラの花びらに変わった。
バラの花びらが舞う中、悪魔は1つだけ残った影に手を伸ばす。
「…どうして、あなたがここに。」
その影…いや、その人は。
私が特別部隊に入る前から知っている人によく似ていた。
「やめて!!やだ、だめっ!!!」
悪魔がその人の首に手をかける。
悪魔が噛み付いた途端、その人は青紫色の花になって消えた。
あの花を私は知ってる。…ロベリア。あの人が私にくれた花。
「…なにを見せたかったの。」
小さい声で悪魔に問いかけると、悪魔はロベリアを手に取りしゃがみこんだ。
「その花に触れないでよ。」
血濡れた手がロベリアを赤く染める。
ロベリアは赤くなるとハラハラと散ってしまった。
すると、物の輪郭が歪み始めた。
眠い。猛烈な眠気。
全てが歪んで行く代わりに、『悪魔』だけは輪郭を失わなかった。
いつのまにか目の前に立っていた悪魔が、また私の頬に触れる。
口付けるように顔が近づくと、紫色の瞳と目があった。
?「夢から覚める時間。」
どこからか声がする。やがて悪魔の姿も歪むと、救護室の天井が見えた。
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神咲のあ(プロフ) - ももさん» ももさん、初コメありがとうございますー!!!ほんとに励みになりますありがとうございます。亀更新ですが是非是非これからもよろしくお願いします!!! (2018年4月13日 9時) (レス) id: 0cca539cb5 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 初めてのコメント失礼します…!いつも続きの展開が気になってソワソワしてます(*´u`)無理なさらず頑張ってください…!応援してます! (2018年4月5日 21時) (レス) id: 514ce4152b (このIDを非表示/違反報告)
くりふわ@想伝(プロフ) - ああああああああああああああ天月すん!!!嬉しい!!!やばい!!(語彙力)取り敢えずありがとうございます!!!!!!!!! (2018年3月16日 19時) (レス) id: 77ed961b3e (このIDを非表示/違反報告)
神咲のあ(プロフ) - ヨワムシうさぎさん» ではツイッターにリプ送らせていただきますね! (2018年3月16日 15時) (レス) id: 0cca539cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ヨワムシうさぎ - 神咲のあさん» えっと、URLの貼り方というかそもそもURLがなんなのかわからないのでツイッターでよろしいでしょうか? 私のアカウントは「月夜の黒兎 @blackrabbit9603」です。 (2018年3月16日 15時) (レス) id: 9999d2d00f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神咲のあ | 作成日時:2018年2月12日 18時