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すると、教授が立ち上がった。その拍子に、山積みの資料がドサドサと音を立てて床に散らばった。Aも立ち上がり、すかさず整理を手伝う。

「あ〜、すまないねぇ。」

少し落ち込んでから整理し始めた。

「いえ、大丈夫です。」

「順番は気にしなくていいから、集めてもらえるだけでいいよ」

「分かりました。」

目の前にある資料を何枚も重ねていると、紙ではないものが資料の下に隠れていた。気になったため、上の紙を退けると1枚の写真だった。

「…教授」

「ん?…あ!そこにあったのか!道理で見つからなかったわけだ…」

教授に手渡すと、写真を見て愛おしそうに微笑んだ。

「見つかって良かったですね。」

Aはちゃんと笑えているか不安だった。それでも、何か言わなければと頭は働くばかり。



「これね、私の妻なんだ。綺麗だろう?」



カメラに向かって微笑む女性。その横に、若い頃であろう教授の姿。少しだらしなく笑う教授とは違う、凛々しい表情だった。
あんなに輝いていた世界が錆びつき始めた。



「はい。とっても。」



顔が引きつっていないだろうか。
上手く、笑えてる?
Aの返事で教授は、自慢気にそうだろう?と言って笑った。
なんだか、息が苦しい。
Aは教授の目を見ることが出来ず、散らばった資料に集中していると、いつの間にか片付いていた。

「ありがとう。助かったよ。」

はい、と返事をして椅子に座った。




「すまないね、今みたいによく妻が私を助けてくれたのを思い出したよ。」




一瞬、息が止まったような気がした。

「そう、なんですか。」





「あぁ。彼女も歴史が好きでね。こうやってよく話したんだ。」






聞きたくない。

「君と本当によく似ているからね。生まれ変わりかと思ったくらいだよ。」





教授はAを妻と重ねていた。内容から察するに、既にこの世にはいないのだろう。





「そうなんですね」



偽物の笑顔で答えると、教授は嬉しそうだった。
既に冷えきった珈琲を口に含んだ。








甘さは感じなかった。






____

さらささんリクエストありがとうございました!
ですが、作り終わった後に先生と生徒の恋のリクエストだったことに気づき暗い話にしちゃいました;;また別のお話書きますね!すみません;;

珈琲はもう、苦くない 1*→←珈琲 1*



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設定タグ:森鴎外 , 文スト , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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あとり(プロフ) - さらささん» ありがとうございます;;ちょっぴり苦いお話にしちゃってすみません;私の確認不足でした… あああ本当ですか!嬉しいです……!!これからも精進して参ります! (2019年12月15日 19時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)
さらさ - すてきな話をありがとうございます 森さんも夢主ちゃんもお互いに想いあっているみたいだけど色んな思いが交差してもう一歩踏み出せない感じですね リアル感があってとてもいいです いやあ 作者様の文才がうらやましいです これからも無理のない様に頑張って下さい (2019年12月13日 15時) (レス) id: a0220cc930 (このIDを非表示/違反報告)
あとり(プロフ) - 白しらすさん» ありがとうございます!!とても嬉しいです…! (2019年10月26日 17時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)
白しらす(プロフ) - ( ゚∀゚):∵グハッ!!かわいい...かわいいぞここの森さん!!!!!好き!!!!!! (2019年10月25日 1時) (レス) id: 71d6bb7d16 (このIDを非表示/違反報告)
あとり(プロフ) - 凛さん» ああああありがとうございます;;上手くかけてるかとても心配だったので嬉しいです;;こちらこそリクエストありがとうございました! (2019年10月18日 21時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あとり | 作成日時:2019年6月16日 23時

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