【完結】傍にいてもいいですか【短編集】

踵をあげた ページ21

※オチなし

鴎外に体を預け、口付けをする。なんとも恥ずかしい気持ちが募るが、Aにとって幸福に感じる時間でもあった。

｢ふふ、何か甘いものでも食べたのかい？｣

｢っあ、はい。先程まで飴を舐めてました｣

鴎外は口角を少し上げ、またAに口付けをした。

ふと、先日見た映画のラブシーンを思い出した。
愛する2人が人目のない所で、甘く濃厚な口付けをしているのを。見ているこっちが恥ずかしくなった。
鴎外とAはまだ、その段階までいっていない。交際を始めしばらく経つが、傍から見れば可愛らしい口付けだろう。
鴎外はAに合わせてくれているのだろうか。Aが恥ずかしくならないように、我慢をしているのではないだろうか。急に申し訳なさが募る。
…少しぐらい、背伸びをしても、いいよね。
胸の鼓動を高鳴らせながら、そっと、鴎外の舌に触れた。が、緊張と恥ずかしさのあまり一瞬しか出来なかった。
鴎外は驚いたのか、唇を離してしまった。Aは後悔した。自分にはまだ早かったのだ、と。

｢…どこで覚えてきたんだい。全く。」

ほんの少し、鴎外の頬が赤いような気がした。
後頭部を押さえられ、気づけば唇が触れていた。一瞬の出来事に、何が起こったのか分からなかった。すると、こじ開けられたAの口内にぬるりと舌が入り込んできた。ここからどうすればいいのか分からず、鴎外の舌と絡めることと呼吸することに精一杯だった。

｢ふ……｣

息が漏れてしまう、そろそろ限界だ。鴎外の肩を叩くが、その手を握られる。
ぷは、と唇が離れると銀の糸が引き、足の力が抜けてしまった。

｢おやおや、さっきまでの余裕はどこにいったのかね？｣

鴎外はずるそうに笑う。

｢…よ、ゆぅ……なんて…｣

息が荒く、体も熱い。呼吸も難しかったため、目の当たりも少し熱く感じる。

｢ふふ、君は本当に愛らしいね。」

鴎外はしゃがみこみ、Aの火照った額に軽く口付けをした。

｢…もう1回、いいかな？」

｢もう1回！？｣

思わず大声で聞き返した。

｢君の口内が思ったより甘くてね、味わってもいいかな？｣

｢ちょっと、心の準備が…｣

｢待たない｣


この後いっぱい口付けした＿＿

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