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少年と虎と矢張り太宰 4 ページ11

ガタッ


隣で敦君が椅子から落ちた。


中「ぼ、ぼぼ、僕はこれで失礼します。」

と云ってくるりと転進し四つん這いで出ていこうとする。

国「待て。」

首根っこを掴み持ち上げる国木田さんは敦君を窒息死させる気かな?


中「む、無理だ!奴―――奴に人が敵うわけない!」

かなり顔色が悪い。これはビンゴかもしれない。

国「貴様、『人食い虎』を知っているのか?」
中「あいつは僕は殺されかけたんだ!この辺に出たんなら早く逃げないと―――」


その瞬間国木田さんが彼の右腕を掴み上げ床に押し倒した。
ビタンッと顎を打ち付けたようで痛そうな音がした。


国「云っただろう。武装探偵社は荒事専門だと。茶漬け代は腕一本か、もしくは(すべ)て話すかだな。」

腕を掴む力をさらに強める。

「確かに荒事専門だけれど、孤児院から追い出されたばかりの少年に手荒なことをする様な仕事ではないし、大体。目撃者を脅すなんてもってのほか。」
太「それに、君がやると情報収集が尋問になる。社長にいつも云われているじゃないか。」

思い当たりがあるようでなにより。

周りの客が野次をしていたようで国木田さんが「見世物ではないぞ。」と追い払っていた。


太「それで?」

蹲っている敦君に話を促す。

中「……うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです。畑も荒らされ、倉も吹き飛ばされて―――死人こそ出なかったけど、貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって、口減らしに追い出された。」


………口減らしに敦君だけ?
いや、今はそれどころじゃないか。


太「……そりゃ災難だったね。」
「まあ、無事で何よりだよ。」

国「それで小僧。「殺されかけた」と云うのは?」
中「あの人食い虎―――孤児院で畑の大根食ってりゃいいのに、ここまで僕を追いかけてきたんだ!」
「なぜ君を追いかけてきたと?」


中「孤児院を出てから鶴見川あたりをふらふらしてた時。僕の後ろに虎がいたんだ!見間違いなんかじゃない!あいつ、僕を追って街まで降りてきたんだ!」


物凄く顔色が悪い。恐らく嘘は云っていないことは間違いなさそうだ。
としたとしても真後ろにいて普通ならば虎からは逃げられない。が、しかし敦君は怪我一つなくここにいる。……おかしな話だ。

中「空腹で頭は朦朧とするし、どこをどう逃げたのか。」
太「それ、いつの話?」

中「院を出たのが二週間前。川であいつを見たのが―――四日前。」

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名無し60018号(プロフ) - とても面白かったです!自分すごく続き気になります!これからも応援してます!頑張ってください! (2020年9月22日 8時) (レス) id: 944439b224 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白翼 桜 | 作成日時:2018年5月31日 15時

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