32.君への感謝を ページ34
華相SIDE
久しぶりに夜の街に行きたくなって散歩していたら…。
…Aちゃんがいた。しかも薬盛られてるのか相手に捕まれているのに抵抗していない。声すら出せていない。どうせ何か考え事でもして、後ろから襲われたんだろうな。
こんなAちゃん見るの初めて。
華「苦しい?」
「…ん…」
ホントはその苦しさも取り除いてあげたいんだけどね。この状況でAちゃんを奪っちゃうのはちょっと違う気がする。
「…し…おん…」
華「どうした?」
「…あり…がと…ね…」
…!人への感謝より自分のことを気にするべきなのに。ホントにこの人は…、どこまでも他人を優先したがる。
華「俺らのボスだからな。助けるのは当たり前のこと」
「…そ…う…」
Aちゃんからの返答はこれで最後だった。ふと顔を見てみると息を荒くしたまま寝ている。まぁ…この方が良いよな。多分起きたら薬の効果は切れてるはずだから。…俺は生殺し状態だけど。好きな女の乱れた姿を見て手を出さない俺って結構紳士だよな?
Aちゃんに好きだとか言っても、きっと優しい理由を付けられて断られる。言ってみないとわからない?…言わなくてもわかんだよ、こういうのは。Aちゃんは…全員大好きだから。この人が一番とか決められないんだ。
華「人たらしだよなぁ…全く」
Aちゃんは俺らに絶対依存しない。俺らは半分依存しているようなものだけど。
親からの愛を知っているからこそ、俺らに過度な愛情がいかないように自身を上手くコントロールしている。もしAちゃんが愛を知らない人だったら俺らはAちゃんを首領にしなかったと思う。
この人になら…全てを安心して預けられる、きっとみんなそう思ってるはずだ。俺も思ってる。初めて…信用できる人に会った。俺は親から愛されてこなかったし、みんな俺を怖がるから友達も出来なかった。
…何の先入観も…偏見も抱かずに俺と話してくれたのは、Aちゃんが最初だった。Aちゃんの集めたあの4人も俺を怖がらずに気軽に話してくれるし、俺は今…人生の中で一番幸せかもしれないね。
あの時も悪くはなかった。誰にも縛られない人生を俺は望んでいた。Aちゃんに会う前も俺は自由奔放に生きてたからさ、あの時もまぁ楽しかったちゃ楽しかったんだよ。
でも…今が一番。
華「Aちゃん、俺と出会ってくれて…本当にありがとうね」
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作者名:suffron* | 作成日時:2022年9月19日 20時