30.喧嘩の相手 ページ32
花桐SIDE
そりゃまぁ…、紫苑も気にするよね。知り合いの親を殺してしまったんだもの。いくら私が気にしてないとはいえ、向こうからしたら相当心に傷を負っているはずだわ。
「…気にしないで、って言ってるのにね」
本当に…律儀な子たちばっかりだわ。
「久しぶりに…、夜の散歩に出ようかな」
もう9月の下旬に入ってしまう。日本はどうもせっかちね、後一カ月以上あるというのにもうハロウィンのものが売ってある。そしてハロウィンが終わったらすぐに品替えでクリスマスとお正月のもの。それから…節分にひな祭り…、
日本に休みという文字はないのかしらね〜。
「目まぐるしく世界は回って、変わって…。呼吸一つすらままならない人がいる」
毎日が息苦しくて…、私だけが不幸だと自分を下げて…、
「…どうりで世界が平和にならないわけだわ」
もう少し休むことを重視したらいいのに。…変わらない世界に文句を垂れても仕方ないか。
不「よぉ、姉ちゃん。こんな時間に散歩か?」
そう、夜の散歩はこういう誘いが良く来る。私はいたって清純ですから?貞操のない女とは思われたくないわけ。
「そうよ」
不「女がこんなとこ一人で歩いていたら、襲われちまうぜ?…俺みたいな奴にな」
典型的な不良ね。路地裏に連れ込まれるフリをしてそこで締めようかな。
「ふふっ、貴方が私を襲うことは絶対にできない。…だって」
相手は不思議そうな顔をしている。でもまだ余裕みたい。
「こんな人目の付かない所に連れてこられた時点で、貴方の負けは確定しているのだから」
不「ッ!?」
昔、紫苑にレスリング技を教えてもらったことがある。
「これが毒蛇締めって言うみたいね」
苦しそう、こんなのかけられたらひとたまりもないわ。男はすぐに落ちて、その場にだらしなく寝ころんだ。このままでいいか。
「喧嘩を吹っ掛ける相手はちゃんと相手のことを知ってからの方が良いわよね〜」
脳みそのない人間は命知らずだ。何手先も読んで、辿り着きたい未来を選択する。それが賢い生き方ってもの。私もみんなが幸せな未来にたどり着けるように導いているつもり。なんだけどね…?
…私が今こうやってやっていることが正しいのか間違っているのかわからない時があるの。
これは多分頭が良いとか悪いとかの問題じゃなくて、性格の問題。
私は何をしたいんだろうなぁ…って、
私の行く先を…見失ってしまうの。
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作者名:suffron* | 作成日時:2022年9月19日 20時