黒薔薇の花束を貴方に【文スト】【芥川龍之介】【ヤンデレ】

三輪 ページ5

「A貴様は…どうして僕を見ない」

彼女の写真にそう問う。写真だから返事がないのは知っている。だが、返事がないことに無性に腹が立った。
腹が立って腹が立って目の前にいる彼女に向かって羅生門を出しそうになる、そんな気持ちを写真を跡形もなく刻むことで発散させた。

『ふわぁ…ねむ〜いなっホイねむ〜いなっ』

歌交じりの彼女の声が僕の鼓膜を暖かく包み込んだ。
否、暖かくなんてものじゃない。
生暖かい血液が頬を撫でるかのごとく、耳を伝って脳に届く。

「嗚呼、どうしてそう貴様は。」



「僕の事をこんなにも虜にさせるのだ」


自分が笑みを浮かべていることすら気づかなかった。


気付けば彼女の後ろ姿なんかじゃ足りなくなって、女の、彼女の、Aの視界に映りたい。声に出して名前を呼ばれたい。
準備が整えば、準備さえ整えば。
彼女…Aを




僕の手の内に入れることができるのに。





貴様の口から『好きだ』と『愛してる』と『貴方の全てが好き』と



〈認めて欲しい。〉


ただそれだけが僕の心を満たしてくれるものだった。



ーーーーーーーーーーそれが例え、どんな方法であろうとも。

Aの全てが手に入るのなら、全て遂行する。



何もかもが整ったその時。


僕とAの家に連れて帰るのだと…心に刻み込んだ。


その時には
一緒に真っ黒に染まった黒薔薇の花束を貴様に渡すのだと心に決めて。

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