第五十四話 彼女の殺/しの理由 ページ7
淳と織田が出逢ってから数ヶ月の時が過ぎた。
特に変わり映えのない日々を過ごす織田、そして織田とは対照的に手を染め続ける淳。
「殺/しを辞めないのか?」
太宰と坂口が不在の何時ものバーで彼は訊いた。
淳は不思議そうに瞬きを繰り返した後、可笑しそうに口元を歪めた。
最近、彼女はよく感情を露わにする。
其れ程織田に対して心を開いたのだろう。
淳の笑い声がバーに響いた。
『辞める理由が 無いもの・・・・・』
何処か諦めたように、彼女は云う。
「理由が無い?」織田は何時も通りグラスに口を付け訊いた。
『私が人を殺/すのは只々命じられたから・・・
辛くも無いし悲しくも無い
『私は彼の言葉に従っているだけです』
そう呟く彼女の瞳はあまりにも空虚で、その冷淡な瞳が何時しかの自分に酷似していた。
「淳」
織田は短く彼女の名を呼ぶと、その頭をガシガシと荒々しく撫でた。
ぐしゃぐしゃになった前髪の下から不服そうな彼女の瞳が見える。
「お前は過去の俺によく似ているな」
『織田作さんに・・・・?』
淳は恐る恐る頭の上の手に自分の其れを重ねる。
男らしい角張った手に女らしい柔らかな手が置かれた。
ふわりと漂う彼女の匂いをついつい嗅いでしまう。
「今は判らないかもしれないが
何時か判る日がくるだろう」
『何ですか其れ』
くすくすと笑う淳を見乍ら織田も優しげな笑みを浮かべた。
頭の上に乗せられたままの手をそっと外す。
カラン、氷が溶けて小気味善い音を立てた。
"何時か判る日はくるさ、俺にも其れが有ったように唐突に"
其の言葉が織田の口から出る事は無く、心の奥へと仕舞われていく。
『あ 織田作さん怪我をされていますよ・・・』
淳は其れ、と織田の左手を指差した。
「あぁ 此れか?」
織田は自分の左手を見てそう云えば・・・と思い出すように云った。
「今日は猫探しを頼まれたんだが・・・
捕まえた時に引っかかれてしまった」
左手にくっきりと残る何本もの赤い線、ぷっくりと膨れた傷口からは微かに血が滲んでいた。
淳は織田の手を取りジッと見つめる。
「そんなに見つめる程の物でも無いだろう?
いいから手を・・・____」
其処迄云った処で織田の言葉は途切れた。
第五十五話 果たして其れは夢なのか→←第五十三話 織田と銀髪さん
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» いえいえ、大丈夫ですよ。 (2018年5月11日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
無断転載禁止 - 私の勘違いでご迷惑をお掛けしましたすいません (2018年5月1日 7時) (レス) id: ad49824d41 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» アイビスペイントにて描きましたので一応証拠として写真を一時的にあげておきますね。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» 本垢なら「とっちー」という名前のはずですが・・・。 (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» それは私です。本垢か文スト垢かどちらのイラストを見たのかは分かりませんが「雨雫」という名前ですよね? (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨雫 | 作成日時:2017年4月11日 15時