第五十九話 届かない、 ページ13
『織田作さん・・・』
彼が彼の温もりが恋しくて私は手を伸ばした。
これは夢。私の夢。
夢なら手を握るだけでも許して欲しい。
しかし伸ばされた手は織田自身の手によって跳ね返された。
何故・・・?
その言葉が口から出る事は無かった。
辺り一帯を包み込む冷たい水。
透明なそれが口に入り酸素を奪った。
『ッゴボ・・・!』
彼の名を呼びたい__
なのに何故呼べない___
待って・・・!
心の中で叫び続けた。
私の心の叫びなど彼に聞こえるはずも無く、彼はどんどんと遠ざかって行く。
意識が浮上する。夢から覚めるのだ。
お願い、夢なのだから私を否定しないで。
ゴボゴボと酸素を吐き出しながら私は必死に彼に手を伸ばした。
.
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手は水を掻いただけだった__。
夢から覚めて淳は自分の瞳から溢れるそれを指で掬った。
口に運ぶとしょっぱい味がして初めて自分が泣いている事に気が付いた。
まさか現実でも夢の世界でも彼から拒絶されるなんて___。
重い身体を起こし寝台から這いずるようにして離れた。
壁に貼られたカレンダーを見ればあの日から3日経っていた。
.
.
.
「やぁ お早う石川君」
『お早うございます首領』
いつも通りの朝。
床にスケッチブックを拡げクレヨンで絵を描くエリス嬢。
それをニコニコと微笑ましく頬杖をつきながら見ている首領。
そして首領の机を片付ける私。
そう、これが私のいつも通りの朝。
森の机から大切な書類を探し、纏め、ホチキスで留める。
『大事な書類です 纏めておきました』
纏めた書類を森に渡すと彼は「嗚呼 済まないね」と云った後に怪訝な顔をした。
森の視線は間違いなく淳へと向いている。
『あの 首領・・・?
何か私の顔に塵でも付いているのですか?』
淳がそう訊けば森は「あのね石川君・・・」と表情を硬くして云った。
「君 顔色が悪いよ
此処数日隈が取れていないし・・・仕事にも支障が
出てきているじゃないか」
矢張り首領にはばれていた。
きっと首領の事だから私の顔色が悪い原因にも気付いているだろう。
『す 済みません』
「否 良いんだよ
君には何時も仕事を押し付けてしまっているし何
より最近は休む暇も無かっただろう?」
「暫く暗/殺の仕事は他の者に回そう
芥川君の処の銀ちゃんが良いかな?」
森はそう云いながら書類にさらさらと自分の名前を書いていった。
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» いえいえ、大丈夫ですよ。 (2018年5月11日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
無断転載禁止 - 私の勘違いでご迷惑をお掛けしましたすいません (2018年5月1日 7時) (レス) id: ad49824d41 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» アイビスペイントにて描きましたので一応証拠として写真を一時的にあげておきますね。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» 本垢なら「とっちー」という名前のはずですが・・・。 (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» それは私です。本垢か文スト垢かどちらのイラストを見たのかは分かりませんが「雨雫」という名前ですよね? (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨雫 | 作成日時:2017年4月11日 15時