第五十話 記憶、そして過去へ ページ2
私の中に有る一番古い記憶は私が丁度七つになった頃の物だ____。
私は
所詮『貴族』と云う家柄の長女。
家の式たりで本格的な教養を付けるのは七つからだと云い聞かされ、やっと勉学をする事ができると嬉しかったのを覚えている。
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次に古い記憶は其れから三日後の記憶。
其の日、私は人身/売買をしている或る組織に誘拐されたのだ。
両親と買い物に出掛けている最中の事で或った。
聞き覚えの無い異国語。
当時の私は母国の言語しか判らなかった。
周りの同じく誘拐されたので或ろう子供たち。
皆が泣き叫び帰りたいと願う中、私は只々泣く訳でも無く叫ぶ訳でも無く一人無表情で床に座っていた。
自分の境遇を理解していない訳では無い。
只、其れが自分の運命なのだと、
齢七歳にしてそう考えていた。
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思えば、此の時から私は既に狂っていたのだと思う。
だって変でしょう?泣かない子供だなんて。
誘拐されて数年。
売られて彼方此方を移動していた私はとうとう罪を犯した。
__人を、殺/してしまったのだ。
其れは所詮"主人"と云う人物だった。
其の記憶はとても朧気で、微かにしか覚えていない。
覚えているのは肉に突き刺さった小刀の感触、錆のようなツンとした臭い。
そして自分が笑っていた事だった____。
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あれ?
私はぼんやりとそう思った。
私は先刻迄、何をしていたのだろう。
上も下も真っ暗な空間、只一人其処に漂っていた。
水の中のように躰の重さを感じない。
何処か心地善くて、其の感覚を楽しんだ。
真っ暗な空間、音の無い世界、重力を感じない躰。
『・・・帰りたい』
そう小さく呟いた。
あれ?帰るって・・・何処へ?
何故だか躰の震えが止まらない。
何かを忘れているようで、私の居場所は何処だ。
とても、暖かい場所だったような気がする。
包帯を巻いた彼がいた気がする。
他にも理想を掲げた生真面目な青年。
蝶の髪飾りを付けた女性。
仲の良過ぎる兄妹。
麦わら帽子が特徴的な少年。
尊敬する最高の頭脳を持った名探偵。
後輩の白髪に夕焼け色の瞳をした青年と赤い着物を着た少女。
そして、あの銀髪に仏頂面の大男。
何か、未だ忘れている気がした。
思い出したい、
ちらりと赤髪が脳裏を過ぎる。
「淳」
沈む意識の中で、誰かが名を呼んで呉れた気がした。
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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» いえいえ、大丈夫ですよ。 (2018年5月11日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
無断転載禁止 - 私の勘違いでご迷惑をお掛けしましたすいません (2018年5月1日 7時) (レス) id: ad49824d41 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» アイビスペイントにて描きましたので一応証拠として写真を一時的にあげておきますね。 (2018年4月22日 10時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» 本垢なら「とっちー」という名前のはずですが・・・。 (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - 無断転載禁止さん» それは私です。本垢か文スト垢かどちらのイラストを見たのかは分かりませんが「雨雫」という名前ですよね? (2018年4月22日 9時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨雫 | 作成日時:2017年4月11日 15時