6話 ページ7
「綺麗だなぁ。」
屯所の部屋から眺める月は、いつにも増して綺麗だった。
紺碧の空に堂々と浮かぶそれを見ていれば、嫌な事などすべて忘れてしまいそうだ。
夕食で強制的に食べさせられた、マヨネーズ御前の味も、その時の総悟の顔も。
私と、総悟は世間ではいう、謂わば幼馴染。
同じ武州出身で、物心付いた時からは一緒にいた気がする。
私は、総悟や近藤さんと違って、帰る家が無かった。
そんな私をミツバさんは妹のように可愛がってくれたし、お姉ちゃんと呼ばせてくれた。
近藤さんは私に剣を、そして誇りを与えてくれた。
ひたすら剣を振るい、剣しか見てこなかった。
けれど、今ではそんな武州も恋しいものだ。
あの頃は、何も私たちを隔てるモノがなかったのだから。
努力して、戦って。
負けて、悔しさを噛み締めて練習をすれば、その成果もあってか総悟に勝てた。
私に負けた悔しさから総悟も鍛錬を重ねた。
一度の勝利で気が緩んだ私は勿論負けた。
そうすれば、また悔しくなって。
そうやって、お互いに触発しあってきた。
お互いに、高め合ってきた。
月を見たって、忘れられないものは忘れられなかった。
忘れてしまえば楽になれたかもしれないのに。
下を向いていると涙が溢れてきそうで、上を向いた。
昔に、戻りたかった。
私と総悟には決して超えることの出来ない壁があったのだ。
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年5月11日 7時