【銀魂】平行線上の僕ら【沖田総悟】 (ページ32)

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31話ページ32

小さい時から一緒にいたからこそ、わかる。

涙したAがいたのも、喧嘩していじけたAがいたのも。

いつも、そこだった。

夜の涼しい風が俺の髪と、Aの髪を靡かせた。

月の光に照らされたそこは、不気味とも言えるし、神秘的とも言えるだろう。

「何。」

俺の足音に気づいたのか、うずくまっていたそいつは、俺に顔を向けることなくそう言った。

「本当に辞めんのか、真選組。」

「うん。」
「何で辞めるんでィ。」

「さっき言ったでしょ。」

そう言うAの声はいつにも増して小くて、今にも消えてしまいそうで。

「じゃあ、聞き方変えるけど。

お前、本当に真選組辞めたいの？」

答えは、直ぐには帰ってこなかった。

涙したAがいるのも、喧嘩でいじけたAがいるのも、いつもここ。

姉上(ミツバ)のお墓の前。

家族がいなかったこいつは、本当の姉のように姉上のことを慕っていたし、
姉上も本当の妹のようにAを可愛がっていた。

そんな姉上の墓跡の前で、いつもそいつはうずくまっていた。

一度だけ、助けて、と弱々しく言うそいつの声を聞いたことがあった。

Aには、ここくらいしか縋る場所がなかったのだ。