30話 ページ31
鈴虫の鳴く音がやけに煩く感じた。
日付も超えたこんな夜更け、眠気すらも起きなかった。
「どうしろって言うんでィ」
自分でも思っているより、遥かに情けなく小さな声が出た。
今のままでは足手まといになるかもと。
真選組が好きだから、真選組の顔に泥を塗らない為にも辞めるのだと、Aはそう言った。
...泣きながら。
「辞めたいと自分の意思で決めた奴を止める義理なんてのは、俺たちにはねぇよ。
けどな、泣いてる隊員の涙を拭うってのが隊長の役目なんじゃねぇのか。
早く行け、総悟。
あいつを止める資格は
野郎がそう言った時には、自然と体が動いていた。
真選組という組織は俺の中ではあまりに大きくて、口に出すには恥ずかしいけれど、大切な居場所なのだ。
そしてAも。
幼い頃から一緒にいたせいで、いない方が珍しく感じてしまうそいつ。
失ってから持っていたものの大切さに気づくように。
手に握っていたものがこぼれ落ちそうになった今、わかった。
俺は、Aと離れたくないのだと。
何年も共に剣を握り続けて来た仲間だからこそ、その想いは一層に強くて。
パズルのピースが一つ足りないと、絵が完成しないように、Aという一つのピースがかけた真選組を、真選組であると認めたくない。
そして、もう一つ気づいてしまった。
Aの唇が俺と触れて、あいつは女であることを再認識したあの時から。
いや、気づけなかっただけで、もっと前から。
俺はAのことが好きだった。
仲間として、一人の女として。
41人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:けんそう | 作成日時:2018年5月11日 7時