幸せな日々に戻れたなら ページ36
紅く染まり始めた視界の隅に太宰と中也、そして見知らぬ男性が倒れているのを見付けた後意識を手放した。
目を開けると地下室らしき場所に鎖で繋がれていた。
そして鉄格子越しに懐かしい顔があったのを見て笑った。
「久しぶり……森さん」
「確かに久しぶりだねA君」
にこにこと黒い外套を羽織りまさに首領と言う様な格好をしているのを見て本当に森さんはポートマフィアの首領になったんだなぁなんて感慨深く思いながら見ていると森さんが真剣な顔になって聞いてくる。
「さて、A君。君は羊に属してるみたいだが君はあの組織をどう思っている?」
「いきなりストレートな聞き方だな…」
「回りくどく聞くより君は此方の方が良いだろう?」
そう言う森さんに苦笑する。やっぱり森さんは俺をよくわかってる。そう思いながら答える。
「あの組織はおかしい。あれは組織じゃない。ただ中也の力に頼り依存してるだけの集団だ。組織の長は確かに頼られるものでないと駄目だ。だけどあれは頼るとは違う。半年一緒に過ごして気付いたよ。あの組織は……いや、あの集団は中也の能力を押さえつけ縛っているだけだってな」
「ふむ、やはり君は鋭い観察眼を持っているねぇ……未だにポートマフィアに誘わなかったのを悔やむよ」
そう言う森さんに俺は嫌悪の表情を見せる。
「何言ってんだ。森さん。約束した筈だ。俺の能力に頼らないって」
「そうだったね。だけど今は頼りたくなるほど面倒な事が起きててねぇ……」
「……先代だろ」
言葉を濁して言う森さんに暫く黙ったあとそう聞くと苦い顔をして頷いた。
「そうなのだよ……」
「心配しなくても大丈夫だと思う。太宰と中也が組んでるならな」
「ふふ、そうかい。なら安心だ」
にっこりと微笑んだあと森さんが言う。
「済まないが暫くの間此処で過ごしてもらうことになるけどいいかね?」
「ん、別に大丈夫だ。それよりエリスは元気にしてるか?」
「勿論だよ。良かったらまた連れてくるよ。それじゃあ私は行くねA君。久しぶりに元気な顔が見れて良かったよ」
そう言い鉄格子越しに俺の頭を撫でてから森さんは地下室を後にした。
……本当は待ってほしかった。
だけど森さんはもうポートマフィアの首領。
俺はその悲しい事実を見た後そっと目を閉じた。
「出来るなら…あの頃に戻りたいな……」
森さんとエリスと俺の三人で暮らしていたあの幸せな日々に戻れたならなんて懐かしく思いながら。
ー
桐崎君にとって森さんは親であり師なんですよねぇ……
【桐崎君にとっての周りの印象】
乱歩:唯一異能で一度自分の事を忘れた筈なのに覚えてくれた人物。推理だけで自分との関係を割り出した乱歩の事は本当に凄いと尊敬している。
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那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 倉の中の石さん» ありがとうございます!思惑通りに暗い過去と思って頂けてついガッツポーズを仕掛けました(笑)続編頑張りますね!! (2019年7月8日 0時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石 - すごく面白いです。こんなに自然な暗い過去は久しぶりに見ました。続編も頑張ってください。 (2019年7月7日 17時) (レス) id: 873805d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 鶴さん» 読んで頂きありがとうございます!更新頑張りますね!! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
鶴(プロフ) - 初めて見たんですが、とっても面白いです!更新頑張ってください!応援しています! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@スマホ使用不可で低浮上中(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!まだ推敲中ですががんばりますね!! (2019年7月5日 20時) (レス) id: a29dbc7b52 (このIDを非表示/違反報告)
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