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十一話 ページ12

..


影山side



空気が変わった。




俺の頭に手をおく手が、動かなくなった。


しまった・・・あの事件のことは、触れないようにしてたのに



『そう、だね』

影「っ!」






あれは1年前。

バレーに関するテレビにしか興味ない俺でも、電化製品で売っているテレビから流れる夕方のニュースで足が止まった。


「藤咲神社の神職に就いている藤咲英夫氏と、妻の絵里氏が土砂崩れに巻き込まれ行方不明となっています。現在も救出活動が進んでいる状態です」


毎年母が買ってくるお守り。あれば藤咲神社のものだ。
花の匂いがついたお守りは常にカバンについている。

なんとなく身近に感じていた神社の人が亡くなった。そのニュースは、少しショックだった。
次の日、家の外で集まるおばさんたちの話は神社のことで持ちきりだった。

「中学3年生の娘さんと、あと一人の親戚で神社を続けていくらしい」




名前も顔も知らない俺と同い年のその「娘」をかわいそうだと思った




.
.


.
.


『私、あの日、居残り練習してて遅くなったの。メールしたんだ。
あと一時間したら帰るって。そうしたら、危ないから迎えに行くって返信が帰ってきて』




いつもと同じような声のトーンで話すA。
止まっていた手は再び動き始め、俺の髪の毛はだんだんと乾いていく



『練習終わっても、迎えが来なかった。そしたら、職員室に残ってた先生に泣きながら言われた。「ご両親が土砂崩れに巻き込まれた」って。

私のせいで、お父さんもお母さんも死んだ。私がバレーに本気になっていなかったら、バレーを愛してなかったらって後悔した』



影「・・・・」



『結局お父さんたちは見つからなかった。骨も家に戻って来なかった。でもね、北川第一の試合をみて、私、少し元気でたの』


自分の出身校の名前が突然出てきて俺は、振り返り顔をみる。


『影山にとって、あの試合は悪夢だったと思う。でも私は、すごいと思った。才能があるコート上の王様。それについて来れない部員。可哀想だと思ったけど、影山のトスはすごかった。
影山っていう人は、今後どうなるのかな、強豪校行って、そのうち日本代表になったりするんだろうなって、想像したら、赤の他人なのに影山の将来が楽しみなったんだ』


いつもと同じように笑うこいつ。でも、やっぱり目の奥は笑っていない。





本気でバレーが大好きなやつの目じゃない。

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ルカ - 伊達工にわ勝ちましたよ? (2020年8月29日 8時) (レス) id: 5379f25137 (このIDを非表示/違反報告)
総陽♪(プロフ) - ぽんさん» 本当ですか?なんか申し訳なさすぎるくらいな駄作だなと思って書いてますので、そう言っていただけてすごく励みになります!ありがとうございます! (2020年4月12日 19時) (レス) id: d63e5bf6c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - 今一番好きな作品です!!クロスオーバー作品の中で1番大好きです!! 更新楽しみに待ってます!! (2020年4月12日 17時) (レス) id: f440fc37e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:総陽♪ | 作成日時:2020年4月5日 13時

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