▼ ページ45
「殴ってきてもいいぜ？ そしたら雷門はホーリーロード出場停止だ。俺もそっちの方が助かる」
「別に。いつもの事だし気にしてないもん」
「……」
「その代わり！ 試合でアイツら纏めてこてんぱんにしてきて！ 」
「ハァ……」
「あれ、返事は！？ 」
走る時は気にならないのだが、歩く時は背の高い剣城の歩速に合わせるのが難しい。
「……私も松風君も、心の中では剣城も元のサッカーしたいんだって分かってるよ」
「チッ……！ またその話か。分かってるってなんだ。お前達に俺の何が分かるって？ 本当に俺の気持ちが分かるなら、今すぐフィフスセクターに従え」
「なんでそうなるの！！ 」
今回は煩いとも言ってくれなかった。
『関東地区予選Ａブロック二回戦！ 万能坂中ＶＳ雷門中が遂に始まります！ 攻めのサッカーが得意な万能坂！ 昨年の全国準優勝の雷門にどう挑むのでしょうか！ 』
実況が始まると選手がベンチからコートへと移動し始める。
「いいか。お前が勝とうとしたら俺達が止める。俺達は俺達のサッカーを守る」
「倉間先輩……」
「天馬、やるしかない」
「……はい！ 」
「松風君！ 」
ベンチに座る私に呼びかけられ、松風君が振り返った。
「なんとかなるさ、でしょ？ 」
「──ああ！ 」
彼は返事をしてから走り出す。
「……万能坂の恐ろしい秘密って結局何なのかしら」──隣の茜さんが、カメラを覗きながら呟いた。
「何だか胸騒ぎがする」
「確かに、結局メガネハッカーズの皆さんからは新しい情報貰いませんでしたね」
「……き」
「き？ 」
「神サマ素敵♡」
「あ、あぁ……」
茜さんの不思議なテンションに振り回されていると試合が始まる。
剣城が磯崎からボールを取る。
「あれ、意外。剣城動く気あったんだ」
「……えっ、まさか！ 」──そのまさかだった。
私が神童先輩に異変を伝える暇もなく、剣城はボールを足の甲に乗せた。デスソード──見覚えのある技がフィールドを縦に横断する。
フィフスセクターからの指示は１ー０で雷門の負けだ。点差が小さいから、ある程度試合を不自然じゃないくらいに盛り上げた後に万能坂中と剣城は動き出すだろう。漠然とそう思っていた私達を、裏切るホイッスルの音。
『ご、ゴール！ 何と先制点はオウンゴール！？ 雷門痛恨の失点だー！ 』
「そんな！ 邪魔をしてくるとは思ってたけどまさかここまでするなんて……」
騒然とするベンチ。私は静かに体温が上がるのを感じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー！ あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (
レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー！！！ あああ一話目から面白そう……！！ え、え、めっちゃ楽しみです……！！ 更新待ってます！！ あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……！ (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やに | 作成日時：2021年7月12日 10時
