頭は間違うことはあっても 8 ページ41
敦くんは空の上である発想を思い付いたという。この戦争には『協力者』が必要不可欠だという。それはこの街を裏で統括している組織。そんなのは一つしかない。
「真逆……」
「その組織の名は」
「―――ポートマフィアです」
その時の太宰さんの表情から察するに、敦くんの言いたいことがわかっていたようだ。太宰さんはそれからなるほどね、と呟くとどこかへ電話をし始めた。その姿をぼんやりみていると、Aちゃん、と敦くんに名前を呼ばれた。
「……あの時はごめん!!」
「……ん?」
「ずっと謝りたいと思ってたんだ。いくら敵の異能とはいえ、女の子を傷つけるなんて……!!本当にごめん……!!あと、その……君の手も払っちゃったし……」
「ええと……」
「な、殴るなりなんなりしてくれていいから……!!責任は取るよ……!!」
だからどんとこいと言わんばかりの顔で、自分の胸を叩く敦くんに困惑する。なんだか話が変な方向にいっているような、と胸の中で小さく思う。
敦くん、と彼の名前を呼ぶと、彼は目をつぶった。なにもしないのに。そんな彼がおかしくて、くすりと笑う。
「もう大丈夫だよ」
「で、でも……!」
「これくらいのことじゃあ、探偵社の社員は勤まらないよ」
ね、と念を押すと敦くんは驚いたように目を見開いた。確かにあの時はショックだったが、あの状況なら仕方がない。私が同じ立場だったら、きっと気が動転して敦くんのようになるだろう。
「街を救ってくれて、ありがとう。私は信じてたよ。敦くんならこの街を救ってくれるって」
ぎゅっと宙ぶらりんだった彼の手を握ると、途端に敦くんの瞳からはぽろりと涙が溢れた。その光景に驚いて敦くんの顔を覗きこむ。もしかして手を握られるのが嫌だったのだろうか。
「ど、どうしたの!?あっ!ごめんねっ、嫌だったよね……!?」
「ち、違うんだ……!!その、僕、今までそんなこと言われたことなかったから嬉しくて……!!」
慌てて手を離そうとすると、今度は逆に手を強く握られた。敦くんは顔を赤くしながらも、真っ直ぐと私をみていた。それから「だ、だから……もう少し、このままで……」とだんだん尻窄みになりながらそう言うものだから、なんだかこちらまで恥ずかしくなってしまう。
しばらくお互いに顔をそらし、無言のまま手を繋いでいると、電話を終えた太宰さんにしつこく絡まれたのだった。
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時