頭は間違うことはあっても 5 ページ38
それから一週間がたち、私は再びフィッツジェラルドさんの前に立たされていた。片手にシャンパンを持ち、優雅に足を組んでいる彼をぼんやり見つめていると、手に手錠をつけた敦くんが連れてこられた。
「おはよう。
フィッツジェラルドさんの問いかけに敦くんは問いかけない。すかさず、私が敦くんに声をかけると、私に気がついた敦くんは大きな瞳をさらに大きく見開く。
「敦くん!!」
「Aちゃん……!?なんで君がここに……!?」
「彼女は組合の客人だ。俺が連れてこさせた」
フィッツジェラルドさんは鼻をならすと、私を見下ろした。するとちょうど、私を部屋へ案内してくれた女の子がバケツをもって入ってくる。
「彼女は……」
「あぁ、モンゴメリ君か?手の内を知られた異能者に戦術価値は無いのだが、本人がどうしても残りたいというのでな」
どうやら敦くんは彼女のことを知っているようだ。彼女はこちらに一瞥もせず、せっせと床を拭いていた。
「さて、こうして呼んだのは君らが知りたかろうと思ったからだ。組合の目的、そして君らを連れ去った理由についてな」
「我々はある『本』を探している」
「『本』……?」
フィッツジェラルドさん曰く、世界にただ一冊のみ存在するらしい。それがこの横浜にあると、予言異能者が予知した。敦くんや私を連れ去ったのは、『道標』だからだという。
フィッツジェラルドさんの言葉に、なるほど、と心の中で呟く。その本を私の異能力『人間創造』で創造させる心算なのだろう。
「君らを空の上にお招きしたのは眼下の街と一緒に灰になられては困るからだ」
「なに……?」
「異能特務課は無力化した。残るは探偵社とポートマフィアだが、この二組織には流石に手を焼いていてな。街ごと焼け野原にしたほうが後々捜し物も楽だ」
「焼け野原?そんな強力な異能眼があるわけ……」
「これに、見覚えがあるだろう?」
そういってフィッツジェラルドさんが出したのは、あの駅でみた継ぎはぎだらけの人形。あのときの光景がよみがえり、思わず息をのむ。彼はこの人形を破壊し、一般人を巻き込みながら横浜を地獄にするつもりらしい。敦くんは降参して探偵社も協力する、だからやめろというと、フィッツジェラルドさんは笑みを深め、了承した。……はずだった。
「但し―――生き残った者のみとならな」
ビリっと人形を破く音だけが、室内に響いた。
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時