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頭は間違うことはあっても 4 ページ37

ぺこり、と部下の人はお辞儀をすると私を客室へ案内した。去り際に振り向くと、フィッツジェラルドさんはまた会おう、と言わんばかりに手を上に挙げた。何を考えているのだ、あの男は。

「……客室はここ。ここにあるものは好きに使っていいから」

部屋へと案内するなり、部下の人は無言で去ろうとした。しかし、その背中に「待って」と声をかけてしまう。

「……何か?」

「貴方……確か探偵社に前にきた子…」

「…だったら何よ。用がないならもう行くわよ」

敦くんを知らないか、と聞こうとしたが言葉がでなかった。代わりに出たのは小さな呟き。
部下の人をよくよく見ると、以前探偵社に来ていた女の子だ。以前とは違い、三角巾を被って雑用をしている。一体どうしたのだろう。
そんなことが顔に出ていたのか、女の子は不機嫌そうに私をみた。

「ま、待って!敦くん……白い髪の男の子がどこにいるか知らない!?」

「……ああ、虎猫ちゃんのこと?知っていたとしても教えてもらえると思ってるのかしら?今貴方は客人として迎えられているけど、いつ殺されてもおかしくない状況よ。利用だけされるのがオチね」

「……もしかして、心配してくれるの?」

「…は?」

「だって貴方の言い方じゃあ、まるで敵であるはずの私を心配しているみたいだよ」

思ったことを素直にいうと、彼女は苛立ったように私をみた。この瞳には慣れてしまった。この瞳は、嫉妬と嫌悪が混ざった瞳。芥川とはまた違う種類の。そして彼女は鼻で嗤いながら嫌味をいう。

「っ……脳ミソがお花畑のお嬢様はお気楽でいいわね。ああ、今はお嬢様じゃないのね」

失礼するわ、と言って彼女は勢いよく扉を閉めた。私はしばらく扉を見つめていたが、ぽすり、とふかふかのベッドに寝転ぶ。

思い浮かぶのは、敦くんに鏡花ちゃん。鏡花ちゃんは未だに見つからないし、敦くんはこの船のどこかに幽閉されているはずだ。ここから脱出しようと思えばできるが、それだと敦くんを逃がすことができない。

「敦くん……」

――――会いたいよ。

ぽつりと呟いた声は誰にも拾われることなく、薄暗い部屋の中に消えていった。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 中島敦   
作品ジャンル:恋愛
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時

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