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たえまなく過去へ押し戻されながら 4 ページ18

「そうか?何ならこの腕時計もつけよう。限定生産で特注ダイヤが――」

「命が金で購えぬ様に、許可証と替え得る物など存在せぬ。あれは社の魂だ。特務課の期待、許可発行に尽力して頂いた夏目先生の想いが込められて居る。頭に札束が詰まった成金が易々と触れて良い代物では無い」

「"金で購えないものがある"、か。貧乏人の決め台詞だな。だが、いくら君が強がっても"社員が皆消えてしまっては会社は成り立たない"。そうなってから意見を変えても遅いぞ」

「御忠告、心に留めよう。帰し給え」

「また来る」

「送ります」

もう来ないでほしい。
そう思っていながら、賢治くんについていく彼の背中を睨み付けていると、フィッツジェラルドさんが振り返った。慌てて普通の顔に戻す。

「明日の朝刊にメッセージを載せる。よく見ておけ親友。俺は欲しいものは必ず手に入れる」

視線が一瞬私の方へ向いた気がした。何だろうと思い、じっと彼を見つめるが、気がついたら逸らされていたので気のせいだったようだ。相手の身長が高いため、頚が痛くなった。
去り際に思い出したようにフィッツジェラルドさんは社長に問いかける。

「ああそうだ、それとあと一つ。『志賀直哉』という人物を知っているか?」

どくん、と心臓が大きく跳ねるのがわかった。フィッツジェラルドさんの目が鋭くなる。社長はそんなフィッツジェラルドさんを気にすることなく、堂々と返事をした。

「いや、知らないな」

「…………そうか」

今度こそ、フィッツジェラルドさんは帰った。緊張の糸が途切れ、ぎゅっと拳を握りしめる。敦くんが心配そうな声で私の名前を呼んだので、大丈夫だと返しておいた。

「Aちゃん、顔色がよくありませんわ……」

「本当だ。 先刻の雰囲気に酔ったんだろう。外の空気でも吸ってきたらどうだ?」

ナオミちゃんと乱歩さんが心配そうに私の顔を覗きこんだ。乱歩さんが飴いる?と珍しく飴を差し出してきたが、やんわりと断っておく。
「ちょっと外の空気吸ってきます」と二人に告げ、ビルの屋上へ向かった。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 中島敦   
作品ジャンル:恋愛
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時

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