検索窓
今日:14 hit、昨日:5 hit、合計:42,762 hit

うつくしき人は寂として石像の如く 8 ページ1

「【どん底】を知ってるか?其処は光の差さぬ無限の深淵だ。有るのは、汚泥、腐臭、自己憐憫。遥か上方の穴から時折人が覗き込むが、誰もお前に気付かない。一呼吸ごとに惨めさが肺をやく」

外でお前を待つのはそれだ、鏡花。と芥川は付け足した。まるでその口調はどん底を知っているかのような話し方だ。

芥川の過去に何があったかは知らない。だけど、芥川が自分の言っていることが正しいと思っているような態度が気に入らない。

「【夜叉白雪】は殺戮の権化。そんなお前がマフィアの外で普通に生きると?」

不可能だ、と芥川は言いたげだ。違う。不可能なんかじゃない。だって私は、マフィアの外で普通に生きている人を知っている。私に新しい世界をくれた、大切な人を。

私は黙っていられなくて、口を挟む。

「できるよ」

「小娘、お前は【どん底】を知らぬから言えるのだ」

苦虫を噛んだような顔をしながら、さらに力強く私の頭を踏みつけた。あまりの痛さに声がでる。

―――知ってるよ、それくらい。そう言いたかったが、私は黙る。芥川の殺気が私に何も云うなと言っているようだった。

芥川はさらに敦くんに対して、「人虎、そこの裕福な世間知らずの小娘にも教えてやるがいい」という。

――――誰にも貢献せず、誰にも頼られず、泥虫のように怯え、隠れて生きていくのがどういうことか。

「殺しを続けろ鏡花。マフィアの一員として。でなければ呼吸をするな。無価値な人間に呼吸する権利は無い」

「っ……芥川…貴方…!!」

「……そうかもしれない」

芥川の言葉にぽつりと鏡花ちゃんは返事をした。その言葉に矢張そうか、という顔をする芥川。しかし、でも、と鏡花ちゃんは続ける。
「クレープ、美味しかった」

「鏡花ちゃん……」

彼女の表情はもう、以前とは違う満足げな顔をしていた。もうこれ以上、この世に未練はないといいたげな様子で。

「小僧ォ!A!!何処だっ!!」

うつくしき人は寂として石像の如く 9→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (34 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
58人がお気に入り
設定タグ:文豪ストレイドッグス , 文スト , 中島敦   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。