牡丹が落ちる時【mfsk】

牡丹28 ページ28

.








｢あーん｣






私の話を全く聞いてないないのか、意に返してないのか

さかたは私を見ながら顔を上げた






さすがに私だってこれが何を示しているかくらいわかる


あれでしょ。男女がやる『ひとくちちょうだい』のやつ





もちろん私がそんな甘々なことをやってあげる義理はないので、無視して自分の口に運んだ





｢ええんか、一日好きにする約束やろ｣



明らかにむすくれた顔をしていて、拗ねているようだった

その態度に一瞬絆されそうになって、慌てて左手を握りこんだ






｢……なら目をつぶって。見られてると恥ずかしい｣



｢わがままだなー｣






さかたは疑いもせずに本当に目を閉じた

無防備に口を開けて私のことを待っている




私だって悪魔じゃないんだから、ここまでさせて無視するなんてことはない




｢はい、どうぞ｣






左手に握っていた白い粉を振りかけて、私はさかたの口にオムライスを入れた






私は悪魔じゃなくて、従順な社員ですから

牡丹29→←牡丹27

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す