【カゲプロ】ヒビヤを追いかけてきた女の子は実は能力者で…。

第２７話 ページ29

『な、なんでひよりが…』





「………」



今はそんなことより、カノさんが…



ふと、もう生気を失った瞳のキドさんを見て、ハッとした



『…カノ…』



「……あぁ、ごめんごめん」



涙を流すことは無く…いや、正確には涙を表に出すことは無く、キドさんを担いだ。



「…ごめんね。でも、こんなとこには、置いておきたくないんだ」



『…わかります…けど、このままじゃ人目が…』



「………関係ないよそんなこと今は」



『…』


ほんとは、すごい泣いてる。
それは、私だけがわかるんだから、隠さなくてもいいことなのに、
あえて出さないのは、自分の気持ちを制御したいことの現れなのかもしれない。


「……にしてもどうすんの団長。
早く起きないと、こんなカッコのままで帰ってこれないでしょ。みんな心配するよ」



『…………カノさん………』



「……はぁ………」





すると、ぱっと蘇る、まだ鮮明としたキドさんとの記憶、
まだギリギリ思い出すことの出来る料理の味。


さっきまで生きていた人間が今、自分で動くことすらできず、生気を失っている


まだ経験したことのなかった、いや正確には記憶になかった恐怖感が、一気にこみ上げてきた。



『…き、キドさ、キドさん………っ！』




生暖かい涙は、頬を伝って地面に消えていった

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