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大丈夫。 ページ13

前にも何度かしたように、頬を撫でて気がついた。



――――――――泣いてる…………?


頬に涙の跡があった。


グッと胸が締め付けられた。

「……っ……1人で………泣くなよ………」

Aの頬を拭って、抱き寄せた。

起こしてしまうなんて、考えてなかった。
むしろ起きて欲しかった。

このまま放っておくと、どこかに行ってしまいそうで怖かった。


「ん………ちゅう……や」

耳元でAの声が聞こえて、胸をなで下ろす。


「ンで泣いてんだよ………1人で抱え込むなよ……」

自分でも、自分のこんなに情けない声は初めて聞いた。

ぐす、とAが泣いているのが聞こえた。


「忘れたく……無いよ……」

今にも消えてしまいそうな、か細い声だった。


「記憶……失いたくない………」


泣きながら、そう言った。

俺の服をギュッと握りしめていた。


なんて言ってやれば良いか、分からなかった。

こんなとき、太宰はきっと安心する言葉を言ってやれる。

それが自分には出来ないのが、どうしようもなく悔しかった。


「大丈夫だ……絶対俺がいる…」

「俺は、ずっとAのそばにいる」


Aはしばらく何も言わず泣いていた。

しばらくしてから、こう言った。


「ありがとう…………」


何もしてやれない自分の無力さに、不甲斐なさに、焦燥した。


「中也……私もずっと……中也のそばに居たい……」

でも、と言ってその後は何も言わなかった。

口に出したくないんだろう。


きっと、Aはこう言おうとした。

『でも、どうなっちゃうか分からない』

と。


俺には、大丈夫だ、という言葉しか思いつかなかった。

大丈夫かどうかなんてなんの確証も無いのに。



Aは、ずっと泣いていた。


しばらくして、泣き止んだと思ったら、俺の肩に頭を乗せたまま寝ていた。

いつもなら可愛いと思えたのに、今日は心配する気持ちの方が大きかった。


頬を拭って、ベッドに寝かせた。


それでも、Aから離れることが出来なかった。

朝起きて、俺がいなかったらきっと寂しい。

それに、俺もこの場を離れてしまうとAが消えてしまいそうで怖かった。


Aを起こさないように、そっと横に寝転んだ。


Aの体を抱き寄せて、その温もりを感じながら、いつの間にか眠っていた。

守るから。→←そばに。



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設定タグ:中原中也 , 文豪ストレイドッグス , 文スト   
作品ジャンル:アニメ
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nao - 私情はさみます……すいません、覚えてるかな、うちのことmaoです、これ見てくれてたら嬉しいです、そして返信くれると嬉しいな……… (2020年9月29日 23時) (レス) id: cb11543b97 (このIDを非表示/違反報告)
きおく(プロフ) - やっぱりハッピーエンドですよね…!!分かりました!!夢主ちゃんも中也も幸せにします!!コメントありがとうございました!!! (2019年9月26日 17時) (レス) id: 8fb2214b40 (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - ハッピーエンドにしてあげて下さい!!  (2019年9月26日 17時) (レス) id: 2eff2af79a (このIDを非表示/違反報告)
きおく(プロフ) - なるほど…!!ありがとうございますー!!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 8fb2214b40 (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 私はハッピーエンドがやっぱりいいです! (2019年9月24日 12時) (レス) id: 11efb22fa1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きおく | 作成日時:2019年7月22日 18時

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