荒覇吐の存在が。 ページ2
きっと、あの時のこと、恨んでたんだろうな…とAが呟いた。
悲しそうな声だった。
蒼空を殺してしまうきっかけを作られて恨みたいのはAの方なはずなのに。
それなら、俺はどれだけの人間から恨まれているのだろう。
マフィアに入り、今までどれだけの人間を殺してきたのだろう。
初めて人を殺したときの、全てを失ったような脱力感。
もう、取り返しはつかない。
Aが下を向いたままポツリと言う。
「蒼空は、いたんだよ……その時の記憶は無かったけど、生きるんだよ、何があってもって言う言葉だけは覚えてた。」
心の底で、恐怖を感じた。
もし、その言葉がなかったら…どうなっていたんだろう。
今そんな事を考えても何にもならねェ。
「そうか…。……辛かったな。よくここまで耐えたな…」
Aが照れくさそうに笑う。
いきなり、Aが驚いた顔になった。
「中也、手袋してない…!」
「あぁ、こっちの世界では異能力は使えねェから素手でも大丈夫なんだ」
今までずっと怯えていた、自分の中にいる荒覇吐の存在に、今は怯えなくて良い。
凄く、気持ちが楽だ。
ふと、思い出したようにAが言う。
「え…?私家のハシゴ出すときに雷神使ったんだけど…」
「は!?偶然そん時に雷鳴っただけじゃねェのか?」
「嘘…!!雷のタイミングが奇跡だったんだね…」
心底感動したように言うAが面白くて、笑いがこみ上げてくる。
けど、今はそれどころじゃない
一刻も早くちゃんとした治療を受けた方が良い。
「取りあえず、トリップして森さんに治療してもらおう。意識さえあれば、トリップしても大丈夫なはずだ」
けど、いつもの世界に帰るのが惜しかった。
「素手で触れんの、最後だな……」
つい、そんな言葉が漏れる。
「そんな事無いよ……」
そうは言ったが、Aの声は自信なさげだった。
さっきから、思ってたことを口に出す。
「なぁ、もうちょっとの間触れてても良いか?」
自分の顔が少し熱くなる。
「い……いい、けど……」
Aが目をそらして、小さな声で言った。
その顔は赤く染まっていた。
少し躊躇いながらもAの顔に手を伸ばす。
Aの頬はさっきよりもちょっと熱い。
人の温もりを感じるのはいつぶりだろう。
汚濁を持つ前の俺は両親や、友人の温もりを、当たり前のようにかんじていたのだろうか。
いつもの世界でもAに触れれたら……。
どうすることも出来ない無力感に襲われた。
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nao - 私情はさみます……すいません、覚えてるかな、うちのことmaoです、これ見てくれてたら嬉しいです、そして返信くれると嬉しいな……… (2020年9月29日 23時) (レス) id: cb11543b97 (このIDを非表示/違反報告)
きおく(プロフ) - やっぱりハッピーエンドですよね…!!分かりました!!夢主ちゃんも中也も幸せにします!!コメントありがとうございました!!! (2019年9月26日 17時) (レス) id: 8fb2214b40 (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - ハッピーエンドにしてあげて下さい!! (2019年9月26日 17時) (レス) id: 2eff2af79a (このIDを非表示/違反報告)
きおく(プロフ) - なるほど…!!ありがとうございますー!!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 8fb2214b40 (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 私はハッピーエンドがやっぱりいいです! (2019年9月24日 12時) (レス) id: 11efb22fa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きおく | 作成日時:2019年7月22日 18時