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第43話 ページ48

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「及川さんお先に失礼します」

「ハーイ、バイバーイ!」





青葉城西高校運動部部室棟。

IH予選初戦を難なく勝ち進んだ男子バレーボール部の部室には、主将の及川と副主将の岩泉が残っていた。


黙々と帰り支度を進める岩泉は、ご機嫌に鼻歌を歌う及川の手に烏野vs伊達工…明日の対戦相手のデータとなるDVDが握られている。またこいつは…、と昔から変わらない隣の幼馴染の行動に呆れつつもやんわりと、彼にしてはやんわりと注意を促す。





「オイ、くれぐれも夜更かしなんかすんじゃねーぞ」

「岩ちゃんは俺のお母ちゃんですか?」

「あ?」




隠しきれていない岩泉の不機嫌オーラとどすの利いた声に、慌てて平謝りする及川。
普段からの見慣れた調子の二つの声が、彼ら以外誰もいない部室に響く。

はあ、とため息をついた岩泉は、先ほど試合会場で会った可愛い後輩の伝言をはたと思い出した。彼女の言っていたことが完全にどんぴしゃで驚きつつ、やっぱりあいつらは息が合ってるんだろうな…と思いにふける。




「…お前、あんまり後輩に心配かけんなよ」

「え?心配って?」

「無理すんな、だってよ」





及川は誰がそう言っていたのか心当たりはないようで、それ誰が言ってたのさ!及川さんのことよく分かってるじゃん後輩ちゃん〜!なんて呑気に言っている。




「木下だ」

「え…?」

「今日、試合前に木下と偶然会って話したんだよ。
別れる直前に、お前がどうせ相手の研究とかで夜更かしするだろうから気を付けて見てやれって言ってたぜ」

「…っ、A…」




ぽつりと彼女の名前をつぶやいた及川の顔は、今にも崩れ落ちてしまいそうに苦い表情をしていた。見ているだけでこちらまで胸がきゅっと締め付けられるような、まるで手が届かない相手に思いを寄せる少年のような。




「…お前、まじで素直になれよ」

「っは、何のこと?俺はあんなクソ生意気なやつ知らないかんね!」





ここまで強情なのも逆にすげえな、と思う岩泉は、ひとまずさっさと帰らないと余計お互いの就寝時間に影響するだろうと支度をする手を早める。




「くだらねえ事言ってんじゃねえクソ及川!
部室閉めんだからちんたらすんなグズ川!」

「えええ、悪口を略さないで!」

「グズ及川!」

「言い直さなくていいよ!!」




木下Aと及川徹の間にある深い溝。
それが埋まるのはいつになるやら。

頼むから明日の試合に影響するな、と切に願う岩泉だった。

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ふぃる(プロフ) - あかねさん» コメントありがとうございます!なんて嬉しいお言葉…!!のんびり更新ですが、これからもどうかよろしくお願いいたします(^^) (2020年3月12日 13時) (レス) id: 57a4697fd9 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - めっちゃ好きです。このお話読んでふぃるさんのファンになりました笑これからも応援してます!! (2020年3月2日 8時) (レス) id: 012863f737 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふぃる | 作成日時:2020年2月7日 11時

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