pineapple 2 (ページ9)

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Yoshihiko side

初めて病院に行った日から約1年が経とうとしていて
まだ肌寒さが残るけどもうすぐそこまで春は来てる

検診がある日にはなるべく
俺も病院ついていくようにしていて

Aちゃんに必要なものを俺が直接理解しておくことで、
彼女の助けになれるように、備えられるようにしたい

Aちゃんが通っていた大学の近くの病院で
なんとなく帰り道にアップルパイの店に寄るのが当たり前になっていた

「えぇ！カフェサービス？」

「そうそう、コロナが開けて復活したんだよ～食べてくかい？」

せっかくならお店で食べたいね！ということで
嬉しそうにいつも接客してくれるおばちゃんに
二人席へ案内してもらうことに。

Aちゃんがソワソワしてるのを俺は見逃さないわけで
幸せとセットで運ばれてくるあの美味しい香り

「ふふっ…」

「あははっ！」

あまりの美味しさに見つめあったりしちゃってさ
思わず吹き出して笑ってしまうほどの
幸せすぎてる、そんな春の午後です。

「結婚、したいね」

「え？」

「結婚しようか、A。」

幸せすぎて、心臓が、きゅーって締め付けられて
思わず口から出てきた自分の感情
プロポーズってもっと、手汗かいて緊張して…
そんなイメージがあったけれど

俺は、この幸せが続いて欲しいという今の感情に嘘をつきたくない。

「これ、見て欲しいの。」

「え…？」

そう言って君から
プロポーズの返事の前に渡された1枚の紙。

「3週目で気づくなんて、早すぎるんだって」

「え、え？」

「これも、快くんが私の体を大切に、大事にしてくれたから気づくことが出来たんだよ。」

涙も鼻水も止まらなくて、あまりにも幸せな事実に
目を抑えても、堪えても、止めてもこぼれ落ちてしまう

「優しいパパのところを選んで、来てくれたんだね」

「うぅ…A、Aぅ…」

「こちらこそ、私と結婚してください。よろしくお願いします…っ」

二人してお店で大号泣。話を聞いていたおばちゃんもつられて泣きながらおしぼりを持ってきてくれるから、さらに泣いてしまう。

「え、さっき？！」

「エコー撮ってもらう時だけ、待合室で待ってもらってたでしょ？その時に先生に言われたの(笑)」

「お前はすごいタイミングで来てくれたんだなあ…」

お腹に手を当てて、大切なものが増えた感覚を覚える
A、君も、君の体もどんなものよりも大切だよ

「変わらず愛してるよ。A。」

「私も、ずっと愛してる。快くん。」

そんな、桜舞い散る春の夕暮れです。