【文スト】スカーレット・バレット【男主】

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＿＿＿＿ポートマフィア本社ビル。


帰還を遂げると、森は「よくやってくれたね、太宰君」と存外満足げだった。


手枷の嵌められていたスカーも、いつの間にか戒めが解かれている。……役割は果たしたので開放、ということだろうか。



「緋景君もよく太宰君と協力してくれたね。彼はなまじ優秀すぎる故に、普通の構成員とはなかなか双人(バディ)なんて組まないのだけれど……。


君と彼はいいコンビだったよ。今からでも転職しないかい」


「褒め言葉と受け取っておきましょう。……とは云え我々の目的は未達成のままですがね」



やりきれないものだ、と緋景は苦笑する。


ポートマフィアとしては損害を免れ、その上異能特務課に恩を売ることに成功する最大利潤を得ているが、ICPOとしては成果はボロボロだ。



「素晴らしい取引だった。けれど残念ながら、君達をここで引き抜くことはできないようだね」


「犯罪組織と取引をするような真っ黒な警察ですがまあ、我々は一応は“表”の一員だ。闇に行くわけにはいかない」


「だが、汚れているからこそ信用できる。……知りすぎた君たちが我々の情報を漏らすこともないだろう。


……我々と闇取引をしただなんてことは、世界警察としては隠蔽したい事実だろうからね」


「仰る通りです。其方も当然、何もなさりはしないでしょう。……真逆ここで、手に入れられる縁をお捨てにはならない筈だ」



緋景と森の間に、不可視の吹雪が吹き荒れる。


強烈な皮肉と嫌味の応酬。……脅迫じみた言葉の遣り取りは凍えそうな程冷たいが、まあ、本来敵同士の間柄で、太宰と緋景が上手くやれていたのがおかしいのだろう。


矢張りこの世は面倒なことばかりだ。



「……兎にも角にも」見かねたのか、尾崎と中原の傍に立っていたスカーが、緋景に歩み寄りながら口を開いた。「我々の協力関係もこれで終わりです」



静かな靴音に、緋景が肩を竦める。


太宰はそれを見て緋景の隣を離れ、スカーとすれ違うようにして森の傍へと戻る＿＿＿＿そうだ、これが本来の位置だ。



「我々ICPOは世界的な犯罪を狩る組織。そしてあなたがたは国内で勢力を伸ばしている。


……お互い、これからは干渉し合わないのが最適解。違いますか、森殿？」


「違わないよスカー君。君の云う通りだ」



それでは、とスカーは、緋景とよく似たストロベリーブラウンの目を細めた。



「これにて我々は失礼致します。ポートマフィア首領(ボス)・森鴎外殿」

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