【文スト】スカーレット・バレット【男主】

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不可解だ。不可解極まる。ぼんやりと霞がかった首謀者の輪郭が掴めない。


いくら太宰と云えどもその思考は、予測は、論理の組立によるもの。情報が少なすぎる上に……敵はまるで狂信者だ。


彼らの云う【女王】の意志とはなんだ。人を従わせる悪魔的なカリスマ性がその者にあるというのか。


……何も知らされていないテロリストも、ポートマフィアがテロ行為の情報を掴み損ねた事実も、何もかもが不可解で不愉快だ。溜息をつきたくなる。



だが、為すべきことは為さねばならない。それが太宰の仕事だ。


流石にそろそろ、敵も異変に気付く頃だ。



「……ん？ 定時連絡がないぞ」


「どの隊からのだ」



＿＿＿＿おや、ばっちり。


まるで思考が伝わったかのようなタイミングで呟かれた見張りのテロリスト達の言葉に、太宰はそっとほくそ笑む。


緋景は滞りなく敵を地に沈め、撃ち、その数を減らしているようだった。そうなれば当然、無力化された人間からの報告などない。


怪しまれるのは当然。ここからどれだけ露見せずに隠密行動を続けられるかが緋景の腕の見せどころだ。



『緋景さん、さすがに勘付いたみたい。要警戒ね』


『了解』



敵たちの会話に耳を澄ませてみると、彼らは数人の仲間をそこに向かわせるようだ。


顔を上げてテロリストの方を見遣ると、少しではあるが置かれたノートパソコンに映し出された監視カメラの映像が見える。画面は四つに区切られていて、映し出される映像は数分おきにランダムに切り替わるらしい。


よく見れば、右上の映像に、仮面をつけ銃を携えた緋景の姿があった。そしてその映像は、太宰が目を見開くより先にパッと次のカメラ映像に切り替わる。


となると、と太宰は顎に手をやる。……膨大なランドマークタワーを監視しているのだから、映し出されたばかりの監視カメラの映像は暫く映らないとみて間違いないだろう。



＿＿＿＿なら。



『緋景さん。君の歩いている場所の近くにカメラがあるだろう？ 気づかれないと思うから、周りに人がいなければそれを無効化し給え』


『判った』


『それから僕の指示したタイミングで、指示した場所の監視カメラを適宜射撃で破壊するんだ』



太宰の頭には、スカーが送ってきたフロアマップが全て入っている。監視カメラの場所も当然完璧に覚えている。これでカメラの無力化も進むだろう。


あとは指揮系統の破壊だ。リーダー格を見分け次第殺せれば、人質救出の目処も立つ筈だ。

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