【文スト】スカーレット・バレット【男主】

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骨伝導マイクでの通信が終わったのを見計らって、さて、と太宰は仮面をつけた緋景を見上げた。


……これでタワーへの侵入は完了した。


あとは太宰が人質に紛れ、人質達の傍にいるであろう見張りのテロリストたちから情報を得て、緋景を支援すればいい。



「……【女王】がここにいるといいのだけどね。


公安警察の潜入捜査官を殺したってことは、【女王】自身かその狗が、余程頭が回るということだもの」


「……そうだな。先頭に立って指揮を執るか、それとも、後方で指揮を執るか……それは【女王】の考えによるだろうからな」



云いつつ緋景は再び、手にした拳銃を太宰の後頭部に突き付け、『突然の事態に怯えて隠れていた少年を見つけ出したテロリスト』を装う。


太宰も表情を取り繕いながら、ゆっくりと歩を進めた。目的地はスカイガーデン(展望フロア)だ。


そして、歩きながら彼はそっと呟く。



「……とはいえ今回のテロはとても奇妙だ。大概にしてテロとは、何か目的があり、何かを要求するために起こるものだろう？


でも緋景さん。彼らは今回、何も望んでいない。……おかしいとは思わないかい？ これでは、『テロのためのテロ』だ」



内務省の官僚達、そしてその家族を人質にして、要求するものが何もないとは。ただ横浜の象徴(シンボル)破壊のために彼らを捕らえているのだとすると、状況は奇異極まりない。


では何故彼らはテロを起こしているのか。意図は一体、何処にある？



「……ポートマフィアの保有する、横浜の会社の株価暴落や……いや、テロの脅威による日経平均株価そのものの下落が目的じゃないのか？」


「株価暴落がテロの目的なら、彼らは株価が下がって『得をする』可能性が高い。……でも少なくともマフィアが調べたところでは、彼らに輸入を扱う裏企業との繋がりはないのだよ」



ふむ、と緋景は頷き、ふと足を止めた。展望階(フロア)スカイガーデンに辿り着いたのだ。


視界の先には、何人かのテロリスト達が入れ替わり立ち替わり、人質達を見張っているような様子が見られる。


……テロリストたちの数はかなり多い。声だけで間諜(スパイ)だと気取られることはまずないだろう。



二人は顔を見合わせ、頷き合う。


そして緋景は人質達の傍に犇めくテロリスト達に声を投げかけた。




「＿＿＿＿おい。子供が一人まだ、下の階に残っていたぞ」

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