だから、終止符を打つ 二 ページ41
「嗚呼、でも先に君の質問に答えようか」と、未だ俯いたままのわたしを見やってから、彼はふうと一つため息をついた。
「私がここにいる理由だったね。それは私の異能のせいさ……『見聞きした全ての事を記憶する』異能。
そう……魂に刻みつけられた記憶も、全て。……だから、“私はここに居る”」
理解してくれたかな? と首を捻る彼に、わたしは辛うじて頷いた。
何だかこの状況は、わたしが拷問されているみたいだな、と脳の一部がまるで他人事みたいな考察を心に吐き出す。
ああ、荒くなる息を整えようとしても、呼吸すらままならない。
如何しよう、苦しい。頭が痛い。視界が、霞む。
「……それにしても織田、ね。凄い偶然じゃないか。
私の救いたかった人の……ジイドの目当ての人物が、まさか彼だとはね」
「……何が云いたいんですか」
絞り出すように云って、わたしは彼を下から睨み上げた。
彼は冷ややかな光を目の中に湛えて、非難するようにわたしを真っ直ぐに射抜いてくる。
「そうだ。その質問をされると、矢張りそれは君にこう問うのが答えになるだろうな。
『君は如何してここにいる?』」
「…………」
「おかしいだろう? 私はともかく、君がここにいる理由は何処にもないじゃないか。
それに君は犯罪組織、しかもポートマフィアなどに所属するべき人間じゃない。君の父親は敏腕の弁護士だった。そして君の……」
「やめてください。わたしはわたしの復讐の為に、ここに居るんです」
制止の声は、静まり返った捕虜室に存外よく通った。
目の前のミミックの構成員は僅かに目を細めると、「復讐か」と呟いた。
「……でもそれは、君が『ポートマフィアに所属する理由』にはなっても、
私の質問に答えたことにはなっていないよ、Aちゃん。それは君が一番よく判っているはずだ」
「ええ。でもあなたには、関係のない話です」
「そういう訳にもいかないよ。彼は君を守りたがっていた。それなのに君がここにいるなんておかしいじゃないか、」
おかしくなんてない。
あの人は。あの人は。
……わたしの、“お兄ちゃん”は。
「わたしを庇って、あの女に撃たれて死んだんですよ。
あの女も結局は死にました。
だから事件は終わりました。でも、わたしの復讐は終わらない」
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やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……!!そう言って頂けてとても光栄です!太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ! (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました!!一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます!太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます!素敵なお噺ありがとう! (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます!!楽しんでいただけてよかったです! (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さにー☆彡 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年3月24日 21時