色のない世界で、君と 2【めいちゃん】

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「行かないで」


「なるせ、」



本当にこんなつもりじゃなかったのに

こんなダサく引き止めるつもりなんて

ぐいぐいと弱い力で俺の肩を押す。
Aってこんなに小さかったんだ。


その弱い力でも俺の中では大きくてそのまま離れる。
せめてもの抵抗として腕は掴んだまま

Aの幸せを願っているはずなのに身体が言うことを聞かない。



「…いつから？」



お互い目は合わせず手の中にある細い手首だけがAを感じさせる。

Aの声は震えていて、俺も喉がひゅっと細くなった。



「多分、8年前から」


「嘘でしょ？そんな感じ全然、」


「俺も気付いてなかった」



またAに再会するまでは


最近よくAのことを考えるようになった。


リハしてる時には、あいつ次のライブ来るのかな

朝起きた時には、あいつはよく寝坊しそうだ

ひとりで酒飲んでる時には、酔った時可愛かったな


そんな馬鹿みたいな自分に気付いた時は思わず乾いた笑いがでた。

学生時代の淡い恋心がぶわぁと蘇ってあぁ、俺まだ好きだったんだと。



「行かないよね？」



Aが腕に力を入れたからそんな不安を口にする。

俺も俺で必死だった、今離してしまったらめいちゃんのところに行ってしまう。

俺から離れていってしまう。



「…っ、」


「ごめん、離したくない」



迷惑かけてることは分かってる。

Aを困らせてることも



「分かった、行かないから離して」



手を緩めるとAはスマホを触ってから無言で俺を見つめる。

ゆらゆら揺れる瞳には不安が表れていた。



「送る」


「いや、今日はひとりで帰りたい」


「…分かった」



足早に去っていく後ろ姿を見つめて、これからどうしようかと考えていた。






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