3 ページ23
「北山…」
「……」
太輔は困ったように俺に視線を向ける。
俺はもう好きにしろとあからさまに二人とは逆の方向に身体を向けて、手近にあった読みたくもない雑誌に手を伸ばした。
やがて微かに物音が聞こえバレないように一瞬視線を戻すと、再びソファーの前に座った太輔にみつが嬉しそうに目を細めているところだった。
──あいつと同じ好きなのか分からない。
──ずっと大事なメンバーだったから、今更そんな風には見れない。
その言葉をはっきりとみつの口から聞かされたとき、太輔の片想いが実ることはないと思った。
それがどうだろう、すっかりみつの方が太輔に夢中になっているような気がする。
人の心なんて分からないものだ、特に…恋心というものは。
グループ内恋愛なんてと思う反面、二人を悲しませる気にもなれなくて応援するよとは口にしたものの、ずっと心のどこかにモヤモヤしたものを抱えていた。
けれど今、こんなに幸せそうな二人をちゃんと見たことで嘘みたいにモヤモヤがスーッと晴れていくのを感じた。
大事なメンバー…、それだけでいいじゃないかと思っていた俺の考えは間違っていた。
恋人…、新しい関係が増えた二人は今こんなにもいい顔で笑っている。
きっとこうなる事が必然だったんだろうなと、ようやく思うことができた。
「…太輔」
「っ、な、何わた」
「良かったね」
心からそう思えるのに、こんなにも時間がかかってしまった。
二人を気遣って体勢を変えずに言葉だけを贈ると、やがて「うん…」と噛み締めるような返事が返ってきた。
「わた…ありがとう」
「別に、お礼言われるようなことしてないけど?」
「…ふふ、でもありがとう」
あぁ、何だか俺も彼女ほしくなってきたな。
この二人を見て漠然とそんな事を思いながら、手元の雑誌をようやく1ページ捲った。
fin
737人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
絢音(プロフ) - たいちゃんらぶさん» 本編のみったんはやや不安要素を残して終えましたが、アフターストーリーの番外編ではそんな杞憂も消えたいぴにすっかり心預けているみったんを描けていればなぁと思う次第であります(*゚▽゚*) (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - たいちゃんらぶさん» たいちゃんらぶさん♪たいぴの勘違いからコメディ風に進み、そして甘々シーンを経てより一層幸せな二人にできて私も嬉しく思います( ̄∀ ̄)♪Yの証人も楽しんでもらえてよかった〜♪ (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - ユキスケさん» ユキスケさん、お久しぶりです(^^)♪私まで優しくなれそう、そのお言葉に本作を創って良かったなと心から思えました…!Yの証人もありがとうございます(笑)第三者目線はなかなか新鮮で楽しく書けました♪ほっこり甘々な二人にできて良かったです(*゚▽゚*) (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - ピンクピーチさん» ピンクピーチさん、いつもありがとうございます♪今回は完全片想いから始まるという珍しい入りでしたが、甘々な着地にもっていけてホッとしております( ̄∀ ̄)横尾さんエピも楽しみながら追加しましたが、楽しんでもらえて良かったです(^^) (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
絢音(プロフ) - *コウ*さん» コウさん、初めまして(^^)序盤からもどかしい二人を見守って下さりありがとうございました!今回かわいめなきたーまさんを書けて私も大満足です(*゚▽゚*)また別の作品でお会いできる事を楽しみにしています♪ (2020年3月18日 20時) (レス) id: f3e37fdd05 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:絢音 | 作成日時:2019年12月21日 13時