陸肆 天の裁き ページ17
「今宵、月夜の晩。
神の意向に従い、汝らに天の裁きを下す」
深くローブを被り、そう声を張る。
廃墟の中、振り返る男達は数十人………か。
「…よっ…と。一時の幸せを」
そう呟き、鎌を振り上げた。
今日も断末魔は…………響かない。
その足で地下へと、階段を降りる。
見張り番はいないらしく、赤子の泣き声が聞こえた。
怖がらせたらいけないな。
そう思い、頭蓋骨を外してフードを脱いだ。
後から思えば、それがいけなかったらしい。
「元気そうで良かった。
もう自由ですよ。檻の中にいる必要はないんです」
・
「心臓が真っ二つねィ………しかも、被害者は悪党オンリーときた。土方さん、気を付けてくだせェよ？」
「あぁ…っておい！話聞いてんのか、悪党だけっつってんだろーが！！」
「え、違うんですかィ」
「違ぇわァアアア！！」
病院で騒ぐなんて、土方さん大人気ないったらありゃしねェや。だがタイミング良く、山崎が入って来た事で部屋は静かになった。
そして、ベッドの机の上に並べられた写真。
「ちッ。今日もか」
「はい。それがどうやら、人身売買を行っていた組織らしく、その被害者達は保護されたそうです」
「この写真、傷一つどころか血一滴すら流れてねェですぜ」
ただ、眠っているだけの様にも見える。
「内傷が無ければ、外傷も無い。
死因は本当に、心臓を斬られた…からなんですよ」
いきなり入って来た医者は、気味が悪いと付け足して
俺の腕の包帯を解き、新しいのを巻く。
昨日、窓の破片で切れたらしい。
気味が悪いのは間違いねェが、下手人の意図が全く掴めねェ。ただ正義抱えた野朗か、はたまた___
・
「総悟、やっと退院か。良かった、良かった。だが」
「俺にしちゃ、粛清以外の点じゃいない方が良かったけどな。だがなぁ………」
「ねーねーゴリラさん、総悟ってだれ？」
「おじさん、いつもマヨネーズ持ってる。
あははは変なのー！！まずそー」
二人の周りをチョロチョロする子供達。トシりんは、とうとう刀に手を掛けた。
「トシ、お願いやめて！！」
誘拐された子供達は、殆どが誘拐された子供達で
引き受け先が決まるまで真選組で預かれと、仰せ使ってしまったのだ。
二人は沖田が子供達に何か仕出かす事を恐れていた。
そうなれば、真選組の面子に関わる。
「真選組は預かり所じゃねぇえええ！！！」
屯所中に土方の叫びが響いた。
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作者名：千の歌を歌う人 | 作成日時：2019年9月8日 1時
