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肆漆 記憶 ページ50

私が消えてしまえばいいのに。

唯一の願い。
そうしたら楽になる?そうしたらこの汚れを消すことができる?





血の涙を浮かべた少女は感情がないように見える。
残酷な骸を前に怯えることも悲しむこともしない。
あるのはただ事実。それだけ。
溢れた涙は、まだ幼い少女に不相応な意味ばかり含んでいる。



「あなたの望みを叶えてあげましょうか?」



差し出された手を少女は取った。
まだその時は意味なんて知らなかったのだろう。
いや、知らされなかったという方が正しい。
記憶が戻る時、彼女は一体どうなってしまうのだろうか。

だが、きっと本来の自分は変わらないのだろう。









『…許さない、お前のことを』


『………』




暗闇の中で響いた声。よく見る夢。

私の夢は、きっと過去と関係があるんじゃないかと思う。何の根拠もないけれど。




「…えぇ、本当ですか!?はい、はい、すぐに向かわせていただきます!!」



屯所内に明るく響く近藤さんの声。
会話の内容からしてまさか……総悟さんが…
廊下に出てみると大勢の隊士が顔を覗かせていた。
その中でも一番身を乗り出して聞いているのは土方さんだ。



「みんな総悟が目を覚ましたそうだ!!」


“「うわぁぁあ!!」”



響き渡る大歓声。
あれから2週間は待っただろうか。聞けば奇跡的な回復力だったらしい。



「…姉御?嬉しくないっすか?」


固まっていたからか、声をかけてくれた佐藤さん。
嬉しくないわけなんてない。
2週間がどれ程長かったか。


「良かっだ…良かっ…た、死ななくて良かった」

「…姉御は笑顔の方が似合うっす!沖田隊長も姉御の笑顔を見たいはずっす!」

「ありがどぉお…(さと)ちゃん」






病院に上がると次第に緊張が増す。
このネックレスのお礼ちゃんと言おう。それでちゃんと伝えよう。好きなんだって。
失いかけて思い出した。
失ってからでは遅いんだと。
今伝えなかったらきっともう言えない。
独特の病棟の匂い。沖田総悟と書いてある病室の扉を開けば、そこにはいつもと変わらない総悟さんがいた。涙が溢れそうになる。
隊士達が入っていくとうるせェなと、いつもの調子だった。何も変わらないね…




1時間程しただろうか、近藤さん達は上からの命令で仕事に戻ってしまった。警察って大変…
そして、言わずもがな二人きりになった病室。
何を話したかはあまりよく覚えていない。





「総悟さんのことが好きです」





やっと言えた私の思い。

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設定タグ:銀魂 , 真選組 , 沖田総悟   
作品ジャンル:恋愛
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千の歌を歌う人(プロフ) - コロさん» 有難きお言葉です!!すごく嬉しいです!頑張ります!! (2019年7月30日 0時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
コロ - おもしろいです!!更新忙しいかもしれないけど頑張って下さいね!! (2019年7月29日 22時) (レス) id: 21d6130453 (このIDを非表示/違反報告)
千の歌を歌う人(プロフ) - サラダ油さん» ぱっちゃんはですね、主人公が付けたあだ名です!主人公は色んなあだ名を人に付けるもので…見てくれて、物凄く嬉しい限りです!!頑張ります! (2019年7月29日 20時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - 新八は「ぱっちゃん」じゃなくて「ぱっつぁん」と呼ばれてますよ。面白いのでこれからも頑張って下さい! (2019年7月29日 18時) (レス) id: 3eb4c4dfa2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くれの | 作成日時:2019年7月24日 22時

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