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第28Q:去年の過ち ページ31

朝の練習で、天神が気づいたことがある。
それは、笠松のオーバーワークだった。

いつも以上に気合を入れた練習。
インターハイ前ならばおかしくないが
これまでの細々としたことを覚えていられる天神だけはその些細な違和感に気づいた。




昼食の時間になっても訪れない笠松の様子に
天神は森山に尋ねた。


『笠松さんみませんでした?』

森山「Aちゃん!!笠松ならまだ体育館に残ってるぞ。そろそろ来るんじゃないかな」



『ありがとうございます』




案の定体育館には、夢中に練習をしている笠松の姿があった。


『笠松さん、これ以上はオーバーワークですよ』

笠松「·····」




笠松は動きをとめ
バスケットボールを見つめたまま口を開く



笠松「·····天神、お前も見てただろ。去年の試合」



❛去年の試合❜______

インターハイ優勝を狙えるほどの高いレベルでまとまっていた海常が初戦で敗退した試合。
それは、笠松のミスが原因だった。

笠松「もう…負けるわけにはいかねーんだよ。
俺のしょうもないミスで夢を奪っちまうわけにはいかねーよ。わかるだろ…」






天神だけがみた主将の弱々しい姿。
女が苦手な笠松も、いますがれる何かにすがらなければ自分を見失う気がした。









『笠松さんは、馬鹿なんですか?』






口を開いた天神が発したのは意外な一言だった。


『だったら尚更、オーバーワークなんてしてる場合じゃないですよ。今年の海常にはキセキの世代、黄瀬涼太がいます。もし、ミスをしたって黄瀬くんも小堀さんも森山さんも早川くんも中村くんもみーんながサポートしてくれます。だって、みんな貴方を尊敬してるから。』



笠松「…」


『出来なかったことを後悔したってすすめないじゃないですか。』


笠松はハッとした。
後輩で、マネージャーである彼女は
こんなにも強くて自分と共に戦っている



笠松が主将としてできることは一つだけだった



笠松「そうか…そうだな。
俺は急ぎすぎてたのかもな。」

その言葉に天神はほほえんだ。

笠松「まだ飯残ってるか?」

『はい。取っておいてますよ。』

笠松「そうか、それじゃ行くか」






笠松がはじめて、天神の目を合わせた。
相変わらず緊張していたが
天神には嬉しい変化だった。






『緊張しないでくださいよ。もう慣れました?』

笠松「…ああ」

『もう!なんで戻っちゃうんですか』

笠松「…ああ」









笠松がまともに会話をできる日はまだ遠いかもしれない

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作者名:水無瀬。 | 作成日時:2020年1月3日 15時

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