第9Q:要らない才能 ページ11
__翌日、海常高校
『御用ですか?コーチ』
体育館へ向かう途中の天神を呼び止めたのは一軍のコーチだった。
「あぁ。部員からお前と黄瀬が誠凛に偵察に出かけたと聞いてな。」
偵察…とはまた少し目的は違ったが
誠凛のバスケ部を訪れ彼らのバスケを見にいったことに変わりはなかった。
『…すみません、勝手な行動を』
「いや、いい。それで、資料は作ったのか?」
『あ…いえ。偵察といっても長居はできなかったので』
「だが…カメラアイで見たには変わりないだろ」
『…』
実際、こういったことは初めてではなかったし、
部に貢献できることは嬉しい。
『分かりました。後程資料にしてお渡ししますね』
「いつも助かる。読み終わったら監督にも渡しておくから。頼んだぞ」
『はい』
笑顔で微笑めば、コーチもふっと笑い部活へ向かった。
___「Aさんのその目には利用価値があります。帝光の勝利にはあなたが必要ですよ」
帝光時代。新しく主将になった彼に言われたその言葉を受け取るにはあまりに恐ろしいものだった。睨むように捉えて離さない赤とオレンジの目玉が脳裏にこびりつく。
『…い…や…』
体育館に向かっていた足は、水道へ向かった。
顔に水をパシャパシャとかけては記憶まで流そうとした
__が、その目で見てしまった光景は忘れられない。
対戦相手の泣き顔も、辞めていった部員の姿も
アメリカへ旅立った懐かしいあの顔も。
『…全部忘れたい』
「…風邪ひくぞ。」
ハッとした天神が振り返れば、立っていたのは笠松
『笠松さん…』
笠松「あ、そのいや…
お前には度々世話になってる。
が、無理しすぎだ。まぁ、その…あれだ…」
ろくに目も合わせず慌てふためくその姿。
しかし、天神にはそれだけでじゅうぶんだったそのキャプテンシーの矛先が自分にも向けられているだけで信頼されているのは伝わった。
何より、 「ああ」と「ちがう」以外の言葉をかけてこない笠松がここまで自分に声をかけてくれただけで良かった。
『ふふ、せっかくかっこいいところなのに。
ありがとうございます、笠松先輩。
先輩のそういうところ、好きです』
笠松「なっ!!」
『私も頼りにさせてもらってますよ。
そろそろ部活戻ります!穴開けててすみません』
走って去る天神の姿を笠松は立ち尽くしてみていた
笠松「ばか…心臓に悪いだろ…」
天神に相手がいることは既知だったが、
笠松の顔は赤かった。
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作者名:水無瀬。 | 作成日時:2020年1月3日 15時