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第二十五話 長の意地 ページ27

「待て」


思わず、息が止まった。
ギリギリとする痛みに顔を顰める。

私は確かに、“彼”が席を立った隙に
ポシェットから毒を取り出して、盛って――

故に、彼は動けない。
はずなのに。

――どうして、彼側にあった腕が、掴まれているのですか。


「武装探偵社社長を甘く見られては……困る……ッ!」


荒い呼吸を繰り返すが、決して掴んだ腕の強さは緩まない。
相手の、獲物を狙うかの如き視線に身震いする。

歯が上手くかみ合わずカタカタと音を立てる。
目尻が熱くなってくる――

――私が、恐怖している?

そう思えば思うほどその事実が突きつけられ、
上手く呼吸ができなくなる。


「も、もう…………離しッ」


「て」まで言葉が続かない。
それ程、喋ることができなくなる程、痛く掴まれる。

すると彼は徐に立ち上がり、
腕を掴んだまま会計へと向かう。

――振りほどきたいのに、振りほどけない。
――逃げたいのに、逃げられない。

彼はレジ係に、自分の分と恐らく私の分も含めた金額より、
多くの代金を払い、「釣りは要らん」と云って店の外に出て行く。

当然、それに引っ張られることとなり、
連れて行かれた先の――


「きゃ!」


人気の無い路地裏に無造作に投げ込まれる。
その勢いで地面に倒れ込み、足が僅かに擦れる。


「すまないな……ご婦人を傷つけることは趣味ではないのだが……
 何分、今は力加減が上手くいかん」


毒により青ざめた顔で、
同じく毒に蝕まれている自分の手を見る。

――少なからず、彼の呼吸が落ち着いているかもしれない。

内心焦りながら、喰い入る様にその光景を見ていると
手から顔を上げた彼と目が合う。


「…………話をするか」


彼の目は、狼の様だった。


 


(今だその腕衰えず)

第二十六話 解き問う質問劇場→←第二十四話 ロヴェリア



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 森鴎外   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 1でお願いします! 更新頑張ってください!!続き楽しみにしてます!! (2018年4月8日 21時) (レス) id: 7443137317 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - みぃさん» 原作第五十話に続くような形で書かせて頂きました。二三回読める話をモットーとしておりますので、深く考えていただけたら嬉しい限りです。更新頑張ります! (2018年4月7日 11時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 最後ので涙がブワッと…エリスちゃぁぁああん!! 更新楽しみにしています! (2018年4月5日 16時) (レス) id: d62fbb3902 (このIDを非表示/違反報告)
臣民(プロフ) - **楼椛**さん» いえいえ!応援有難う御座います。たっぷりお楽しみください! (2018年3月26日 20時) (レス) id: d39d595e1e (このIDを非表示/違反報告)
**楼椛** - 初コメ失礼します!今日初めて拝見させていただいたのですが、とても面白いです(ありきたりな言葉ですみません) 更新頑張ってください!これからも森さんを楽しみにしてます!←← (2018年3月26日 19時) (レス) id: e7e0abd8b6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:臣民 | 作成日時:2017年10月22日 9時

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