玖の巻 ページ10
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「ダメか?」
相変わらず大胆なことをしていると自分でも思う。
自分でも自分らしくないと感じて、相手の出方を待つ。
漆黒の瞳が揺れて、俺を見つめる。そして思いついたようにふっと笑う。
「ええ、喜んで。」
色々な言葉を飲み込んだ上の喜んで、なんだろう。こいつの瞳がそう言っている。
俺は昔から人の目を見て悟るのが得意だ。坂田もまーしぃもセンラもそれで通じ合えた。
「そうか、お兄ちゃん。この女の子、大丈夫?」
「え、ええ。はい・・・どうぞ・・・」
まずいな、勘づかれている。浦田の嫡男が吉原に来ているとばれたら江戸中に知れ渡っててんやわんやになるだろう。親が有名だと子も大変だ。
その気持ちを知ってか知らぬか、女は笑みを絶やさずに言った。
「では、こちらへ。」
礼を言わねばならぬか、下級遊女に助けられたものだ。
俺が通された部屋は遊女がいっぱいいる大部屋だった。
遊女が二階にたくさんいるということで、勿論行為中の人だらけである。
「お前は平気なのか?」
「平気ですが、貴方は気になされますか?」
「俺は別に、平気だが。」
「ならよかったです。花魁になると個室が用意されるんですけどね。端に移動しましょう。本日は行為をしないのでしょう?」
やっぱり俺が見込んだ女だ。間違いない。
周りの遊女を見てみる。どれも男に尽くすために生きてきた人間のようだ。だから俺は遊女や花魁が嫌いだった。
だがこの女は普通の女だ。というか、いい意味で女という感じがしない。
「俺の気持ちを知ってか知らぬか。お前は本当に頭が良いのだな。」
「お褒めいただき、光栄でございますわ。」
俺も武士の端くれだ。こいつの目を見ると建前だとわかる。なんせ散々こいつの性格の悪さを見てきたからな。
気づいたら俺は女の肩に手を置いていたらしい。女は少しびっくりしていた。
「猫は被らんでよろしい。俺の前では普通でいい。」
少し怖い目になっているだろう、だがそんなの気にしない。
俺はこいつの本当の姿が見てみたい。たとえ嫌われたとしても。いや、こいつの性格ならば俺を嫌わないはずだ。かえって強気に皮肉なことを言うだろう。
「そうですか。貴方も本当に頭が良いのですね。大御所様の前で堂々と吉原批判を。」
やはり皮肉を言ってくる。普通だったらここで女を切り殺してもおかしくはない。
だが俺の場合は好奇心が勝った。こいつと喋りたい欲求が勝った。
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球
作成日時:2019年7月20日 20時