卅弐の巻 ページ43
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何度見ても綺麗な城。惚れ惚れするほどきれいな城。
そこに今日は俺たち以外に一人、その景色を見ている女子がいる。
「ここが上宮城・・・・。」
あまりにも美しすぎて恐怖すら感じる目を輝かせて、興味津々そうに城を見つめて。
さっきからこの女子に声をかけている坂田は気づいてもらえない。全く可哀そうな奴だ。坂田以外はみんなこの女子の横顔に夢中だった。それもそうやろうか、だって、かわええもん。
「なぁ、センラ。和歌ちゃん生きとる??」
「生きとるやろ、今は景色に精一杯なんや。そっとしておき。」
今にも和歌ちゃんにとびかかろうとしている坂田を必死で宥めるが、それにしても長すぎやせんか?
そんなにこの城が気に入ったのか、もうそろそろ坂田がとびかかりそうだ。我慢の限界が近づいている・・・・と悟った瞬間、和歌ちゃんが急に振り向いた。
「綺麗だな〜。見てても飽きない。」
「もー、和歌ちゃん見惚れすぎやで。いくら城が綺麗やからって・・・。」
「ん?あぁ、ごめんごめん。話聞いてなかった。」
ずっと吉原で暮らしてきたから外の景色をあまり見たことがないのか?ならば思う存分見せてやろう、君はもう自由なんだ。
このお姫様を平和に暮らさせてあげるのが俺らに課せられた使命なのではないか?
どこからともなく、志麻くんと俺は目を会わせて笑う。そして同時に和歌ちゃんの手をつかむ。
「今日からここで暮らすんやで。」
和歌ちゃんは驚いたような顔をして、美しい口角をつり上げて笑った。
城に入ると、まずは家臣の「挨拶合戦」と呼ばれるものが始まる。(これは坂田が勝手に名付けたものだが。)
「お、おい。センラって言ったよな?城じゃこれが普通なのか?こんなに渉様はあがめられているのか?」
「せやで。うらたんは別格なんや。俺らはうらたんのお気に入りやから少しは待遇されるけどな。」
何もかも初めてで城のイロハを知ろうとしている和歌ちゃんの目には本当に頭が上がらない。
こういう子が上に好かれるんやろうな。俺みたいに多少ひねくれているやつはあまり上に行けへんし。
純粋無垢、この単語が俺の頭の中からすっぽりと抜けている。俺はそう自覚せざるを得なかった。
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球
作成日時:2019年7月20日 20時