卅壱の巻 ページ41
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上宮というのは浦田の居城である。いつも帰ってくる城だが、今日はいつもと違う。
「ここが上宮城・・・・。」
津々楽和歌、という女が浦田に加わることとなったからだ。
名目上はうらたさんの側室。だが本当はうらたさんの政などを支えていくのであろう、遊女育ちというのだからびっくりだ。
漆黒の目が綺麗に光る。夕日にも帯びてその目は一生美しく輝く。ここには檸檬、桔梗、朱色、そして翡翠・・・と色とりどりの目をしている輩がいるが、ここまで真っ黒な目をしたやつはなかなかいない。
少なくとも俺が知ってるうちでは・・・・二人目。
気持ち悪いように真っ黒な目をした人を、俺は知っている。
「和歌ちゃん?わーかちゃーん!!」
和歌ちゃんは答えない。坂田の呼びかけには気づいていないようだ。
津々楽という家は聞いたことない。名の知らない大名か、はたまた武士か。農民や町人には名字はつかないから、武家の出身ではあるのだろうが。
吉原に売られるなら・・・・そうとう家が厳しい状況にあるのか、はたまた親に忌み嫌われていたのか。恐らく前者だろうが、吉原には経済的に厳しい家の女子が売られると聞いたことがある。となるとやはり農民・・・えた・ひにん身分のやつか・・・?いや、そしたら名字はつかないはず・・・。
「まーしぃ、何考えてんの。」
「う、うらたさん・・・。」
「今日は宴会だ。浮かない顔してると折角の上手い飯が台無しになるぞ?和歌を思いっきり歓迎してやれ、あいつは歓迎されることに慣れてないからな。これからは仲間なんだ、なぁまーしぃ?」
あぁやっぱりうらたさんにはかなわない。考えるのはやめよう、心の底から尊敬するうらたさんが見初めた女だ。悪いやつではなかろう。そうだ、きっと、そうに決まってる・・・。
「おい坂田、城に入るぞ。」
「えぇ!?ちょ、うらさーん!!やだー!!」
坂田が引っ張られて城に入っていく。俺はその様子を見つめながら、センラくんと目を見合わせた。
さぁお姫様、上宮城へようこそ?これからたっぷりもてなしていくからな・・・?
「今日からここで暮らすんやで。」
和歌ちゃんは驚いたような顔をして笑った。俺らの前で見せた初めての心からの笑顔だった。
城の中に入ると、うらたさんは和歌ちゃんに城の説明をし始めた。
それをよそに坂田はずっと横でうずうずしている。センラも心なしか・・・わくわくしているような気がする。
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イチゴミルクキャンディ@サブ垢(プロフ) - PE@みたらし団子バカさん» わー!ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月18日 19時) (レス) id: e98fc17c66 (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - 更新頑張ってください! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
PE@みたらし団子バカ - これは私の好きな種類の話だ! (2019年8月17日 19時) (レス) id: b72e644e8b (このIDを非表示/違反報告)
いまりちゃん - もでらーと。さん» ありがとうございます!!(パソコンから返信しています。)そしてそしてもでらーと。様は様々な小説を書いていらっしゃるのですね!お星さまが坂田さん色で憧れます(笑)更新頑張ります! (2019年8月3日 22時) (レス) id: 42f8b00619 (このIDを非表示/違反報告)
もでらーと。(プロフ) - おもしろいです…!私、歴女&crewなので超嬉しい組み合わせです!更新楽しみに待ってます! (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5d5b1bd419 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イチゴミルクキャンディ | 作者ホームページ:プロ野球
作成日時:2019年7月20日 20時